暗黒がある空間の中に、ある小さな少女がいました。

真っ黒な髪をさらりとさせ、つぶらな瞳は綺麗な赤でした。

その少女の瞳の先には、ある女性の姿がありました。

その人も黒い髪をさらりとさせ、温かな赤の瞳をしてました。

『珍しいな、お前からここにくるのは』

「・・・・」

『何が欲しい?お前が望んでいるものがあるならば、それらを全て―』

「母様。外に出てみたいとは思いませんか?」

淡々とした言葉が少女の口から出された。

それを聞いて、『母』はきょとんとしている。

そしてくつりと微笑んだ。

『なんだ・・・。それで私を体内へと召喚したのか』

「ええ」

『でも良いのか? 私は破壊神さえいわれている存在だぞ? その世界を木っ端微塵にさえできる恐怖の大魔王だぞ?』

と『母』は少女に脅しをかけてみた。

「でも母様は優しいです」

『珍しいな。 兄のことになれば、兄を庇うのに。 今度は私に対して褒め言葉か?』

「母様のこと好きだもん。 兄・・・シアンも」

『・・・本当に珍しい。 一体お前が今いるところはどんな世界なのか・・・興味があるな』

「でしょ? だから外に出てみてよ」

『仕方ないな。 お前にそれ程勧められればなおも興味がわいてくる』

くつりと『母』は微笑んだ。







はた、と私は目を覚ました。

朝日が見えて、懐かしさを覚えた。

きょろりと左右を見る。誰もいない。

まだ暖かな温もりが残った毛布を己の身体にかぶせ、身体を著しくぎゅっとさせた。

ああ・・あの子の温もりだ・・。自分の大切な大切な大切な・・。

そう思い、私は呟いた。

「ありがとう」と。





シオンはまだ眠りについているらしい。

ただ、一体いつ起きるのか、それは分からず私たちは朝食を食べていた。

その時だった。

突然 ぶあ・・・とくる何らかの「触感」。

どこからかと私だけ振り返り、「どうしたんですか」とニーナとウィジュは私を見る。

そしてそこに現れたのは・・・。

「おはよう、シン」

にこりと、微笑むシオン。

違う・・こいつは・・この方は・・・。

「・・・スフィア・・・様・・?」

その言葉ににっこりと微笑む『スフィア』。

「流石にお前には隠し通せなかったか」

呆然とした私にこの言葉はキツイ。

さらに、自由気ままに移動し、ふとニーナを見つめる。

「ほぅ、お前がシオンが言っていたニーナだな」

ニーナも呆然としていた。

何が起こったのか、このお方が何者なのか分からない模様だ。

そして・・・。

「そしてあそこにいるのが、ここの世界の星の民だな」

とはいったものの、その張本人もカチカチの放心状態に陥っているが無理もない。

スフィアはそれほど有名な「神」なのだから。

そんな、張本人ウィジュは未だに固まっている。

それを見て、じぃ・・と興味津々でウィジュを見るスフィア。

「・・大丈夫か?」

「はぃぃぃ。だいじょうびです」

かっくんかっくんと人形のように話すウィジュ。

そんなウィジュを見て 「本当に?」というスフィアだが、無事ではないのは確かである。

「それよりも、スフィア様。何故シオンへ・・・」

私の言葉にくつりと笑うスフィア。

「シオンが勧めてくれた。 後、そろそろ起きろとも言われたから起きただけだ」

その言葉を聞いて、そうかと私は納得をした。

「少しの間だが、よろしく。ニーナ」

なのに何故、このヒトはニーナにくっついているのだろうか・・。

はぁ・・と今後の不安が募っていく。

「とりあえず、ニーナから離れてください。スフィア様」



とぼとぼと歩いていくと町が見えてきた。

ここは、「1年前から変わってませんね・・」と寂しくニーナは言っていた。

「・・・私の所為ね」

ふと後ろを振り返ると、寂しくつぶやいているウィジュがいた。

「・・・私がもう少し強かったら・・・こんな風に壊滅状態にならなくても済んだのに」

ぽん と私は優しく肩を叩いてあげた。

「・・あ・・すいません。つい・・」

「もっと前向きに」ときっぱりと私は言った。

はい・・ と恥ずかしげにウィジュは呟く。



ウィジュさんとカイルさん・・いえ、『スフィア』さんが歩いている時、私ニーナとシンさんは・・。

「『スフィア』さんって一体何者なんですか?」

「・・・ニーナ。お前は、「星の民物語」を読んだことがないのか?」

「いえ・・私の場合は、存在を教わっただけなんで・・」

「・・そうか」

ひゅおお と冷たい凍てつく風が私たちに襲い掛かりますが、別になんともありません。

ですが、シンさんにとっては少しきついのでしょうか、顔をしかめています。

「スフィア様は星が創造される際生まれた神獣だ。破壊神とも言われている」

「・・・破壊神!」と私は驚愕しました。

「そこまで不安になる事はない。大人しくしていてくれれば可愛いものだ」

「カイルさんは消えてしまったのですか?」

「消えてはいない。多分スフィア様に肉体を貸すかわりに内で眠っているのだろう」

そう言ったシンさんは、少しですが微笑んでました。



そのまま歩んでいく私たち。

後に待っていたのは「神」でした。





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