「野宿か・・」

「野宿ですね〜」

「野宿ねぇ・・」

「・・野宿だな・・」

暗くなってきた道筋に対し、私たちは呟く。



アスタナの町を出て、早2日が経つ。だが、まだまだ村も、問題の呪われた森すら見えてこない。

「しょうがないわねぇ・・」

「大丈夫ですよ。ほら、これとか、あれも食べれますし」

と、明らかに『毒』と記されるほどの毒々しい茸が目の前に。

「ニーナ・・それは毒キノコだ」

「え!!!!」

本人も知らなかったのだろうか。それに気づきすぐにぽいっと草むらの中に捨てた。

・・・まるで何事もなかったように。

その際、一番気を悪くしていたものが一名いる。

というか、「旅」で「野宿」などやったことすらないらしい。

全く「星の民一族」の名が泣くぞ。

はぁ、と私は溜息をついた。

「しょうがない。私とシンで狩りと釣りに行く。ニーナとウィジュは森の中で食料調達してくれ。全員早めに戻らなければ迷子になるぞ。絶対に二人で行動すること!  いいな?シン」

あっけにとられるシンに対し、 はぁ と私はまた溜息をつく。

「話・・・聞いてるか?」

「・・・ああ、まぁ」と曖昧な言葉で濁そうとする。

それよりもなによりも・・ニーナだ。

毒キノコを平気で食べそうだった彼女がとてもじゃないが心配なのだ。

(ウィジュ・・頼む・・) そう私は心から願った。



ということで。

私はウィジュさんと一緒に森の奥へと行きます。

「確かここら辺に美味しい木の実があったはずなのよ。料理にも活用できるからね」

「ウィジュさんは何でも知ってますね〜」

「何でもじゃないけどね。これぐらいは「星の民」の常識なのよ?殆どが、シオン様から教わったんだけどね」

「と言うことは、カイルさんはプロなんですね」

ぷっ と笑うウィジュさん。

あれ?私何か笑いを取れること言いましたっけ?

「確かにプロで剣も魔法も使えたりするけどね・・・ある人物が一番怖いのよ」

「それが・・・えっと」

「オメガ様ね。結構な美形なんだけど、口煩いのよ。そのオメガ様にいつもいつもごちゃごちゃ言われているのよね、シオン様は」

「へー・・。ヒトと変わらないんですね・・星の民さんって」

「性格はね。シオン様が異常に堅苦しいのが嫌いで、ほとんどがそんな風な性格」

木の実が発見したのでそれを右手で取っていき、左手に置いていきます。

「私たちがヒトとは違うのは、「神程のチカラと能力を持っている」のと「不老不死」ということ。神程・・って言うのは、ヒトには持つことが出来ないチカラのことね。言うなれば強大なチカラを持つ「超能力者」って感じかな?」

こくり と私は頷きます。

「よく分かります」

「まぁ、それ以外は殆どヒトと同じなのよ」

ぷつん と木の実が取れる音が広がります。

「嬉しい時はにこりと微笑んで、嫌なことはぷくーっとふてくされたり。悲しい時は・・・・泣くしね。私も苦しい時もあったし、やっと成長してきた って感じかなぁ。でも・・・」

ふっ と明るい月を見てウィジュさんは微笑みます。

「「神」という存在に負けまくってるなんて、この世界を管轄する身で、いろんな人たちを助けなきゃいけないのに・・。動けない自分が一番悔しい。「弱いから」って動かない自分が一番悔しいのよ」

でも、私達は確かにこの人が助けてくれたんだ。

「うれしいです。私と仲間たちを助けてくださって」

「・・・ニーナ」

「だから、自分に自信を持ってください。もっと自分に誇ってください!」

それが、ウィジュさんに渡すことが出来る精一杯の気持ちです。

「・・ありがとう、ニーナ」

ごしごし と泣いていたのでしょう、涙を拭いて。

「よーし!!木の実も大量に貰ったことだし!帰るわよ!ニーナ」

「はいっ!ウィジュさん!」

そう言って、私たちは来た道を戻っていきました。







釣れない。

当然だ。この時間帯、月の明かりだけでは、どうやっても釣れる訳ない。

だが・・・まだ希望はある。そう信じて私たちは釣りをしているのだが。

「釣れないな」

「・・・なぁ」

「ん・・?何だ、シン」

「・・・あんたはあの時私をどう思っていた?」

「あの時というのは、冥王星が支配される時か・・・」







シンが管轄をしていた、冥の世界にてのこと。

どんどんと「滅者」に追い込まれていた時だ。

『まだここに居たのか、シン。逃げなければ食い殺されるぞ』

『嫌だ』

はぁ、と私は溜息をついた。

『私がこう言うのも馬鹿馬鹿しいが諦めろ。どう見てもこちらが不利だ』

『不利とかそんなのじゃない!!せっかく生命が産まれたんだ!!俺の目の前で産まれたんだよ!それなのに・・・諦めろだと!?』

どんっ と手を握り、地面にたたきつけた。

『冗談じゃない!!絶対守る!!逃げるものか!!』

そう言い、一気に外へと言ってしまった。

冥の世界は、冷たく、長年生命が産まれなかった。

木々は溢れていて、産まれてきても大丈夫な環境だったが、日が射さない場所というのが原因だ。

しかし、「滅者」が襲撃してくる前々日。ついに生命が産まれたのだ。

それを守るために冥王星に残ると言い、此方の話を聞いてくれやしない。



『ぐ・・・』

握りつぶされそうになったのは、シンの首。

にやりとした「滅者」はシンの耳元で悪魔のように囁く。

『・・死ぬが良い。ここは私たちのものにする』

『何を・・そんなこと・・させ・・』

シンの意識が朦朧とする。そのときだった。

しゃっ という切れ味の良い音がした。

私は「滅者」の腕を切り、何とか切断させたのだ。

ぼとぼとと血が滴り落ちる。

『・・・お前は・・』

意外な人物を見、一瞬驚いた様だが、すぐにニヤリと笑った。

『お前だけでも連れて行く。あのお方の元へ連れて行く』

するりとした手が今度は私へ。

『連れて行くのはいいが了承を得たのか?』

その言葉にピクリと反応をする「滅者」。

『兄は神経質だからな。私を巻き込みたくはないと話してくれたことがある。私を連れてきたら、果たして兄はどうなるか・・・分かって言っているのか?「滅者」』

『・・・・・・』

『兄が怒ると・・・怖いぞ?』

そういうと、諦めたのか手はだらんと地面に落ちた。

『・・・・分かった。だが・・・・この星は、我らが貰う』

『しょうがないな。特別だぞ?』

『・・・なんで・・・』

私は諦めていたが、シンは諦めていなかった。

『なんで!なんでお前の言い分で!!俺はここから離れないぞ!!絶対はなれ―』

どん、と言う音がした。

そう、私がみねうちをし、気を失わせたのだ。

『なんで・・・だ・・・』

シンの瞳から涙が零れ落ちた。

自分の管轄を守れなかった。そんな涙を。

『・・・すまない、シン。だが私にとってはお前も大切な宝の一つなんだよ』

そう私は呟き謝罪した。

その後、シンは何度も何度も泣き、ついにリヴァス化してしまった。

リヴァス化。それは恐怖、責任、負の感情の激しいブレを感じると身体が縮小していく・・・つまり成長が逆流するという病。

最後は生命自身、還元すらされなく消えてしまう。

責任が強い星の民やガーディアンフォースやプロテクターがなることが多い病。

そのときは、私が直接接触し、保護をし、話を聞いたり子供のようにあやしたりする。

だが己の負をすぐさま忘れてしまう・・・なんてことはない。

忘れられない、寝ようとしても寝れない。

そのまま酷くなれば何かに怯えるようになってしまったり、己に傷をつけて楽しんだりすることもある。

だが、シンはそれをも乗り越えて復帰した。

それはやはりサンやあの3兄弟が影から支えてくれた結果だろうと私は考えている。



話は戻る。

「まぁ、可愛いなと」

「・・・そうじゃない!」

「恥ずかしがるな。それは真実なんだから」

「・・・いや、だからそうじゃなくて!!」

冗談をいい、私はくつくつと笑う。

「大丈夫だ、オメガよりも可愛かったぞ」

「だから―」

「不安なのだな」と私は言う。

「全てが初めてで、全てをどうやって見つめればいいのかという不安。そして、あの時守れなかった己の領域をここで思い出してしまったのだな?」

地面を見つめ続けるシン。

「そろそろ、落ち込むのは止めろ。前向きにいくんだ」

「・・・だからあの娘に引かれたのだな」

「あの子は、風のような少女だからな。そういう子はやはり好きだ」

そういい、私は釣りに集中した。

その時。

「・・ん?」

どたどたと茂みから現れた羽がついた小人。

「助けてなのよう〜〜〜〜〜!!」

小人は必死に逃げるが、今にも追いつかれそうだ。

後ろからついてくるものは、獣。しかも大きい。

シンが獣の体を真っ二つに一気に切り落とした。

「ありがとなのよう!!」

ぺこりと感謝の意をこめる、小人。

「私たち狩りをしていたんだけど、襲われて・・・もうどうすればいいのか分からないのよう!」

「流石にその小ささでは、苦難だろうな」

「実は、「竜のヒト」に狩りを任せっぱなしで、私たちあまり狩りをしなかったのよう!そのツケが・・今になって・・うっうっ・・」

泣きついてくる小人に対し、私はあることを閃いた。

「ならばこうしよう。私たちと一緒に狩りをする。その時私たちにも少しだけ獣肉を分けてくれないか?」

「いいよう!!こちらこそありがとうなのよう!!」







「遅いわねぇ・・・」

「遅いですねぇ・・」

「迷子になってたりして」

「プロなのに迷子だなんて・・それでも心配です」

「まぁ、待ちましょうか」

「ええ、待ちましょう」







「ここが狩場かぁ・・・」

呆然と見ているのだが、狩場に驚いた訳ではない。

なにより、大暴れなのか、パニックなのか、単に逃げているのか。

もう、それが分からないほど・・・これは小人たちにとってはだいぶ不利なのは分かった。

反対に「食料調達」に燃える私は「さあ、やるぞ。シン」とシンに促した。

「・・・どうやって?」

「剣で一撃」

「狙いが分からんし、定まらないかもしれない」

「何を弱気なことを」

「元々俺は魔法主体なんだ。それを」

「まぁお前なら大丈夫だ、さあやれ」

「・・・・・・」

もはや無理やりずるずるとシンを引きずりながら歩いていく。

「狙いは、やはり心臓だな。一気にずばっとそこを引き裂くんだ」

「・・・そんなに簡単なのか?」

「簡単かどうか、やってみろ。他の所でもかまわない。目でもいいし、アキレス腱も効く」

「・・・分かった。やってみる」





その頃、私達は。

「ふぁぁぁ・・」

「眠いの?ニーナ」

「眠いですが、待ってます」

「頑張りやさんね」

わたしが目をごしごしとしているとふと後ろから、

「私たちも頑張りやさんかもな、シン」

と、声がしました。

「シオン様!」 「カイルさん!」

「ちょっと遅くなったが、食料調達してきた」

どっしりとした獣肉が目の前にあります。

大きなものが4〜5個程。

「うわぁすごい!これはいいメインディッシュになりそうね!」

やはり、ここは旅人。

いい感じの肉に惚れこむ事は間違いありません。

しかし・・狩ってきた人たちの反応は。

「・・・とったのは俺なんだが」

「綺麗に切ったのは私なんだがな」

ばちばちと激しい音がしています。

こそりと私たちは小声で話してました。

(二人に何があったんでしょうか・・ウィジュさん)

(・・聞かれても私にも分からないわよ・・。ただ二人とも・・)

くすり とウィジュさんは微笑みました。

(意地があるのは分かるわね)





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