悲しい時も、嬉しい時も一緒だった『リュカ』。
でも、その『リュカ』に酷い事をしたのも事実で。
なぜ、その「事実」を忘れていたのでしょうか。
もしかすると、それで彼が・・「神」が怒っているのかもしれないというのに。
「お早う、ニーナ」
私はにっこりとニーナに声を掛けた。
その時、私とシン、そしてウィジュで朝食と後のことを話していた。
特に、シンがうるさくて困るのだが。
そんな時、丁度良くという感じでニーナが来てくれた。
「お早うございます。カイルさん」
「シオン・・・これから一体どうする気だ?」
なにが、 とパンを食べながら言う私。
「なにがって・・・オメガも怒ってるし、一旦帰った方が―」
「帰ったら帰ったで、オメガは怒る」
そう私は断言した。
「そして、困るのも私だ」
「だからといって「チカラ」を使われては困る」
「そこまで「チカラ」を使うことはないよ」と苦笑する。
「・・・とりあえず、帰る気はないのだな?」
「今は。一度帝都というものを見てみたい。そして「神」とやらも」
そうだろう? とニーナに聞く。
「・・ええ・・」
「ねえ」とウィジュさんは声を掛けてきました。
「ちょっと外に出よう」
そう促してきたので、素直に私は外に出ます。
「・・どうしたんだウィジュ」
さあ と私はとぼけた。
「ウィジュにもニーナに個人的に言いたいことがあるんだろう」
「ねえ、貴方は何の為に旅をしているの?」
問いかけてきたウィジュさんの顔つきはとても真剣でした。
「「神」に会い、『リュカ』に合わせてもらうためです」
ですが、現実はそうもいきません。
「ですが・・もう『リュカ』はいないのかも知れませんが」
「・・・ふーん。貴方はあの人に『リュカ』を求めてるんだ」
えっ と私は驚きました。
「そんな子が、あの人に会うなんてことあってはならないことだと思うんだけどね。それに何度会ったとしても、もうあの人はは貴方に興味はないよ」
「・・・・・・」
「そろそろ「流れ」から脱出したほうがいい。貴方が彼と惹かれあうのはもうないわ」
どんどんと私と『リュカ』のキョリが長くなっていきます。
遠く、長い道のり・・・それを歩くのは私にも無理難題な事です。
ですが・・・。それでも会いたいと願うのは私の「欲」なのでしょうか・・?
でも・・ と言葉を続ける、ウィジュさん。
「その・・聞きにくいことなんだけど」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせながらウィジュさんは言います。
「・・『リュカ』ってどんな子だった?」
くすり と私は微笑しました。
「『リュカ』は、素直で、全てに興味津々で、海を見たときも驚いてましたし、それでもって子供っぽくて・・って私もまだ子供ですが、大好きなものはゆで卵、嫌いなものは寒さと痛さで・・・私の話も聞いてくれて―」
その言葉を発した時、私は声を止めました。
『私、兄様のことが好きなんです。でも兄様は、姉様のことが好きなんですけど・・』
『それでも・・私は兄様のことが好きだなんて・・大胆不敵すぎにもほどがありますよね?』
『・・ごめんなさい。でも・・聞いてくれて有難うございます、リュカ』
私はリュカに「神」を求めていました・・。
ぽたりと雫が落ちました。
そんな私に対してウィジュさんは不安そうな声で「・・・どうしたの?」と言ってきました。
その時決意しました。
「私、「神」に謝りに行かないと」
「・・・・・何故?」
「リュカに「神」を求めていたから。「神」にリュカを求めていたから。それは、ヒトでも苦しいことです。それを私がしたのならば・・・謝りたい。ただそれだけです」
「それにしても、長いなウィジュ」
「女は長話が大好きなのだよ」
「・・・確かに。それは納得が出来る」
「もう少し、女の行動を勉強しとけよ、シン」
「・・・分かった」
にっこりと納得してくれ、そして微笑んでくれたウィジュさん。
「「星の民」の下っ端がどこまで貴方をサポートできるかわからないけど・・。貴方の決意に答えるわ」
「・・ありがとうございます・・ウィジュさん」
ほろほろ と止まらない涙は数十分ほど続きました。
「泣かないでよ・・私が困るでしょ?」
その数十分後、ニーナとウィジュは戻ってきた。
(ウィジュ、失敗したな)
こっそりと、ぼそりと言う私。
(・・・あまりそんな事言わないでください)
むぅ と唸るウィジュが可愛く見える。
(まさかあそこまで信念が尖ってるとは思えませんでしたよ)
(やっぱりな)
(って・・。初めから決着は知ってたんですか・・!?)
(確かめたかっただけだが)
くぅ・・・ とまたもや唸るウィジュ。やはりこういう女が素直で可愛い。
さて。
「これからどこへ行けばいい?ニーナ」
「・・それがですが・・。私、帝都に行く前にスルーした森があるんですよ」
ほう、 と私は興味津々になる。
「その森は1年前に、呪砲によって呪われた森になってたんですけど。あの時は何とか通過できたのですが・・今はどうなってるか」
「多分、呪いは強くなってるわね。その森」
「確か、その前に村があったような・・」
「ならば、目的地は決まったな」
4人とも頷く。
「目的地はその村と呪われた森だ」
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