はぁはぁ と息を切らしながらも私たちは走ります。

「もうすぐ・・・アスタナ・・」

「あの雷・・・バルハラー以上のチカラがあったような気がします。カイルさんもアスタナですし・・心配です」

「ダイジョウブ・・きっとダイジョウブ・・」

ですね、 とアスタナの町に入っていきます。

異変は入口で分かりました。

あの鋼鉄な・・オリハルコン製の大砲が・・木っ端微塵に壊れていたのです。

「これは、一体・・」

そう言い、私たちが町に入っていく時でした。

どぉんという音が私たちの丁度頭の上に落ちたのです。

悲鳴を上げる前に痛みが来て、ずきずきします。

「やはり生きていたか」

そう言って ばさりと竜の翼が広がります。

それは「神」でした。

「・・・貴方は・・・」

意外な人物が目の前にいるので、私の心はどきどきしておりました。

ですが、もう、『リュカ』はいないのだと思うと、どうすればいいのだと困惑している自分もそこにいるのです。

「今からでも遅くない。死ぬが良い、うつろう者よ」

そう言って雷が来る と思った瞬間。

「そんなこと、私がさせないわ」

きりっとした言葉がそこに広がりました。

瞬間、「神」の手にあった魔力は文字通り、消えてしまったのです。

「やはりお前か・・」

ふわり とヒトが降りてきます。

「お・・おしえたガールさん・・?」

あっけにとられ、その人をしげしげと見てしまいました。

その人は微笑んで「まぁ、何回も会ってることだし、その名で言われるのもしょうがないわね」と言いました。

「私の名は、ウィジュ=ゲイル。星の民であり「気候」を司る・・・貴方たちから見れば「カミサマ」って奴ね」

「星の民・・・」ごくり と緊張が走りました。

星の民・・神であり神ではない・・世界を守る者。

「その星の民が何故、私の邪魔をする?」

「そんなの簡単。貴方にこの子達を殺させない。それだけよ」

「誰の命令でこれをやっている?」

「自分の意思よ、意思」

その言葉にふっ と微笑む「神」。

「面白い・・・その力がどれだけあるか見させてもらう」

ばちばちと雷が迸ります。

しかしそれを、ヒュールでいとも簡単にウィジュさんは雷を飛ばしました。

「私には魔法を飛ばすチカラがあるの。だから、どんだけ打ってきても無駄―」

その飛ばした場所が・・・アスタナ丘の上の基地だったとは・・。

「まっず・・・」

さあ・・ と顔色が悪くなっていく、ウィジュさん。

なぜ、「マズイ」のか知らない私たちは「綺麗に落ちましたね〜」と、のほほんとしていました。

それを見ていた「神」は余裕綽々でウィジュさんに言いました。

「魔法もこなせぬ、チカラもないお前に何が出来る? 何も出来ないくせに」

「そうかもしれないわね。でも・・・」

すっと「神」に対し手をかざした。



「『貴方にこの世界を滅茶苦茶にさせたくないの』」



声が二重に響きました。

一人は幼そうな少女の声で、もう一人はウィジュさんの声。

その時、目の前が眩くなりました。

太陽が飛び出してきたからです。

何故、夜だったのに太陽が出たのか、私には分かりません。

でもそれは一瞬の事でした。

「『サンウェイブ!!』」

ウィジュさんはそう叫ぶと太陽の熱は「神」の頭上へと燃え広がりました。

「ぐっ・・・」

「『お願い、フォウ。ココから立ち去って。そうでなければ・・・私は・・・』」

「私は・・・あきらめない」

「『フォウ。お願い・・・ここから』」

「うぉぉぉぉぉ!!!」

そういうと「神」は翼を広げ、強大な太陽の熱を一気に吹き飛ばしました。

「まだ・・・私は動けるぞ、ウィジュ」

それでもボロボロになってしまった「神」を、涙を流しながらウィジュさんは見ていました。

『もう嫌・・・もう、こんなことしたくない』

ジジっという音がウィジュさんからしました。

刹那、「神」からも同じ音がした。

『私にもっとチカラがあれば・・・皆を守れるのに・・・』

「何を・・・―」

そう「神」がいう前に、私たちの目の前から忽然と「神」の姿が消えてしまいました。





刹那。低音の男性の声が聞こえてきました。

「全く・・己の魔法すら扱えないのか、お前は」

綺麗な銀の髪。さわりとした髪がそこになびいておりました。

そして同じく白銀の瞳。

きつい瞳ですが、少なくではありますが優しさも見えてました。

「まぁ、とにかくなんとかできたのだから、文句言うなシン」

「できたって・・・あんたは拘束されて何も出来なくなってた所で―」

そういったのは・・ 「カイルさん!!」

驚きました。

宿屋にいると思っていたカイルさんがまさか、シンさんという人と共にあの建物から出てくるなんて。

一体何が起こっていたのでしょうか。察しができません。

「ああ、ニーナ。無事で何よりだ」

「一体どうしたのですか・・?カイルさん。なんで丘の基地から・・」

「うーん・・話せば長くなりそうだな・・。とにかく皆 疲れてるだろう?明日きっちりと話をしないか?」

「してる場合じゃないんですけどね、こっちは」

ぎろり とカイルさんを睨み付ける、シンさん。

「やれやれ、面倒くさい者に救われてしまったものだ」

と言っていた途端。

ぱたりとウィジュさんは倒れてしまいました。

「ウィジュさん!」

「大丈夫だよ。彼女は無事だ」

そう言われ、私はほっとしました。

「とりあえず一度宿に戻ろう。 彼女を野放しにしておくわけにはいかない」





* * * * * *





・・・眠れません。

『星の民』『カイルさん』『「神」』『ウィジュさん』に『シンさん』・・。

不安で不安でしょうがないです。

本当にどういったご関係なのでしょうか。

なんであの建物から二人は出てきたのでしょうか。

もう眠れないと思い、外に出ました。





外には星空が広がっていた。

完全に平和とはいえない町なのに、「今は平和だ」といわんばかりに輝いている。

ふと ふらりと宿屋から出てきたニーナに声を掛けた。

「ニーナも眠れないのか?」

はい・・ といつもとは違う。いつもより元気がなさそうな声だった。

「・・・なんだか訳が分からなくなってきて・・」

そうか・・ と私は呟く。

「とりあえず、隣に座った方がいい。ニーナ」

立ち尽くしていたニーナを私は座らせる。

「・・・さて」

ふう と夜の涼しさを浴びて、私は話をし始める。

「どこから喋ろうか・・?」

「何故、あの建物から出てきたのですか?」

「始まりは・・・確かニーナに良く似た人が私に魂になってでも・・・コレをニーナに渡してほしかったらしい」

それは・・・「姉上のリボン!!」

「やっぱりニーナの身内だったのか・・・」

「はい・・・。魂ごとということは・・・やっぱり」

「もう生き絶えていた」

その言葉で彼女は溜めに溜めていた涙を一気に零す。

「あの後・・・やっぱり・・・」

「・・・当時、旅をしているときに会ったのか?」

「はい・・・」

「そうか・・・」

ぽんぽん、とまるで子供をあやすように私はニーナの肩を優しく叩いた。

「だがそれならば良かった。寧ろ丁度良かったのかもしれないな」

「・・・はい?」

「もうそろそろ話してあげようか」

そう言い、ニーナの姉の最期を教えてあげた。

「お前の姉をユンナという奴は利用した。私を誘い出す為に」

「・・・どうして?」

「私が「星の民」だから」

「・・・!?」

驚愕の顔でニーナは私の顔を見る。

「その際に、もう一人の「星の民」が来た。それがシン」

「あ・・・あの人もですか!?」

「私は再生の神、本当の名はシオン。シンは死後の世界を管轄する神だ」

「・・・じゃあウィジュさんは?」

「あの子か。実は私もまだ会ったばかりだからよくは分からないんだがな」

「そうですか・・・」

とはいったが、彼女の事はなんとなくだが知っていた。

だが、それだけで話すことは出来ない。

「ニーナの姉の魂は無事に死後の世界に送られた。これでようやく休むことが出来るだろう」

「はい・・・ありがとうございます・・・えっと」

「カイルでいい」

私はそう言い、俯いた。

「ニーナ・・・私達は―」

私達はもう旅は出来ないのだろうか。そう言おうとした時。

私の手をぎゅっと握ってくれた。

彼女はまだ涙を溜めていた。それでも精一杯の笑顔で。

「仲間です」

そう言ってくれた。



「それでは・・私、寝ます」

「私も寝るかな」

「ぐっすり眠れそうです」

「私もだ・・疲れてたのかな」

「お互いそうかもしれませんね」

月夜を見ながら私たちは、宿屋へと入っていきました。



神と言われた時に私はそんな感じがしました。

神秘的というか、雰囲気で。

でも俯いたり、むっつりしたり。

悲しい顔したり、苦しい顔をしたり。

喜んだり、笑顔が綺麗だったり。

それはもう、神ではない存在。



星の民は綺麗な人たちです。



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