「―で。これはどうやって出来ているかというと」

ニーナがこの世界の知識を優しく教えてくる。



私たちは今、泥の道と呼ばれている一直線の道をしっかりと歩いている。

しかし何故、どうやったらこの道は出来たのであろうか・・?

そんな疑問を彼女が優しく簡潔に教えてくれるようだ。

「世界には、『うつろわざる者』という「神」の存在がいます」

ロッドをぴっまるでレイピアを持つかのように上にあげるニーナ。

綺麗に服とマッチしていて、まるで教育者のようだ。

「『うつろわざる者』は現在『リュカ』の他に7匹の古竜がいます。世界はその7匹の古竜によって見守られております。その中の1匹、『泥竜ノスト様』によってこの道は作られたらしいのです」

ほう と興味心身で私はニーナの知識を聞いた。

「だが、何故この道を作ったのだ?」

「多分・・帝都から逃げ出してくる人たちのための道だと思います。彼らは神様・・そのものですから」

ほう とまたニーナの知識に感心した。同時にそんな神様は魔物という凶暴なものもそんな所に放置するのか、と少しながら心の中で苦笑する。

「神」とはうつろわない、時の風を吹かない者のことを言うらしい。

「この世界には「神」が何人もいるのか?」

「いる というよりもヒトに召喚された者たちの事を指すのですが・・」

「ヒトによって召喚された?」

ええ、と複雑な顔つきになるニーナ。

「平和の為に呼び出されたり・・」

「平和の為だけに!?」

私が驚いた声で言ったので え・・ええ、とニーナも驚き、もっと複雑な顔つきになる。

平和の為だけに「神」が現れ、その世界をほぼ支配する。

一瞬あいつの顔が思い浮かんだが、あいつはそれほどまでに凶暴化したのか?

とにかくニーナの言っている「神」というのは私が知っている「神」とは違うことは良く分かった。

「でも・・」

ふい に思い出した、フィーズさんが言っていた『存在』。

「星の民という人たちがいるらしいのですが、その人たちは「神であり神ではない存在」らしいのですが・・」

ご存知ですか と私はカイルさんに問いかけてみました。

「知らないな・・・」

と彼は答えました。

彼にとっても知らない存在のようです。







知らないと彼女に言ったが、まさか目の前に「星の民」がいるのを知らずにいるだろう。

さらにその「星の民の中の神」である存在の私を知らないだろう。

何故素性を隠すのか。

私たちはこの世界に『存在』を知られてはいけないから。

密かに、私たちはこの世界を見守る存在なのだから。

そして、生命という『種』を作り上げていくのが私たちの使命なのだから。







そんなことを考えながら私たちは、目の前の大陸を目にしました。

「もうすぐですね、カイルさん」

ああ、 とカイルさんも満足そうに言った瞬間でした。

突然地鳴りが聞こえました。

地鳴りは、一斉に大きくなり その巨大な姿を見せました。

蛇の様に連なり、強大な竜巻を召喚しました。

その竜巻は巨蛇に絡み合います。

「カイルさん・・変なのが来ましたね」

「なかなか大きいな・・」

そう言い、私たちは武器を手に持ち 構えます。

「まずはこの竜巻を何とかしなければいけないが・・」

そう言ってふと私はニーナを見つめた。

もはや私は魔法を使えない・・否。使わない。

剣技すらない私に果たしてコレを倒すことは可能だろうか・・?

だが、私の心配など問答無用だったようだ。

「竜巻に直接暖かな風を吹き込みましょう。霧さえ無くなれば竜巻は消えると考えられます」

ほう と私は感心した。なかなかの監視力だ。

だが、と私は思う。

「そのような力がお前にはあるのか?ニーナ」

「任せてくださいっ!風が相手ならどんとコイです!」

気合とやる気と自信を持っているかのような希望に満ちた顔のニーナ。

そして手から出されたのは強大な・・私の想像を絶するほどの風。

「いっけぇー!」

その風は一直線に竜巻へ行き、竜巻と絡み合い・・消えた。

そして竜巻という抜け殻から姿を現した中身を見、私は一気に切りつけたのだ。

殻から抜け出した蛇は脆い。

簡単にどさりと泥の海に溶け込み、沈んでいったのである。



「なかなかの風だったぞ」

とお褒めの言葉をカイルさんから貰い、えへへと私は照れました。

もうすぐ、私たちは西側の大陸に到着します。





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