「大帝橋を使いたい? 今は無理だ」

きっぱりと言ってしまうアースラさんに顔を見合わせる私とカイルさん。



ここはハシビトの町。

1年前は軍事の交流があったのですが、今となっては帝都から逃げてくる人たちで多いらしいのですが・・。

でもそれは私の当時の知識なので・・・その時とは現状が違うと思います。

「何故ですか?」

「向こうの方で、大量に魔物が出現したらしいんだ」

「・・魔物が・・?」

「それよりもニーナ。コイツは何者だ」

まるで、「私の敵」かのようにカイルさんを睨みつけます。

「えっと・・カイルさんといいます。一緒に旅をしているんです」

よろしく とカイルさんは頭を下げます。

「とりあえず―」

同じ事をアースラさんは言おうとしたのでしょう。

しかし、後ろから来る影に話題を移します。

「兄様!」

「ニーナ! ハシビトの町に居たのか!」

「ええ、今ついたばかりです」

「そうか・・その人は・・?」

「カイルさんと言います。いい人ですよ」

私はにっこりとカイルさんを見ました。

「ニーナ。それよりも・・これからどうするつもりだ?

ここが通れると思って一直線でここまできたのだろう?」

いい所を突っ込んでくるカイルさん。

心当たりはあるぞ、と兄様はいいます。

「ダムのところに道が出来たんだ。その名も・・・泥の道と呼ばれるのだが・・」

「ならそこから・・!」

「ニーナ。落ち着け。問題があるんだ」

え? と私は興奮が冷めた。

「そこも魔物が出るんだ。大帝橋よりも強い魔物らしい・・」

「だが、大帝橋とやらは使えないなら、そこから行くしかないだろう?」

「だがお前は・・・ニーナを守りきれるのか?」

「兄様!私は私で守れますよ!」

「どうだか・・・以前もかなり無茶しただろう」

やたらと心配性な兄様は、カイルさんに挑戦をさせました。



* * * * * *



「これで25匹目・・か・・」

ほう と私は一人呟く。

私が立っているのは森の中。そこで私に出された試練は・・・。



「魔物倒し?」

誰に対して言ったのかというとニーナに兄様と呼ばれている虎人、クレイに。

「キリアの村で依頼があったんだ。『最近、西の森で大量の魔物が出没している。だれか助けて』といった感じで」

ほう と私は呟く。

「その西の森でどれだけの数の魔物を倒せるか・・。それだけでニーナを守りつくせるかは定かではないが―」

「やってみよう」と 私は意気揚々で返事をした。だがニーナは必死に止める。

「そ・・・そんなのダメです!カイルさんに何かがあったら」

「私なら大丈夫だ、ニーナ。 魔物倒しは以前趣味でやっていた」

と、得意げな顔もしてしまったが。



にしても、なかなか順調に魔物を倒していく。

この世界はおもしろい魔物の形をしている。

ああ と私は考え直す。

そんなことを言ったら、アースだってそうだな。

いや、とまた私は考え直す。

アースは・・動物に似ている形が多かったな・・。

そんな素っ気無いことを考え、次々に魔物を倒していった。







「あいつ、なかなかやるな」と俺は呟いた。

何かに取り付かれていると言わんばかりにばっさばっさと桜色の刀剣で魔物を切っていく。

ならばこちらも、とやる気になった。

ふと上が気になったので見上げた。

『目』がひとつあった。

それは俺を見つめていた。

まるで獲物を見かけた獣のように。





どんっ と激しい音がした。

「・・・!」

巨大なものを取り囲むように、卵のような形の魔物が居た。

巨大なものは一つの卵を見ていた。

それは・・・―。

「兄様!!!」

「クレイ!」

返事をするかのようにぴこぴこと卵からはみ出された尻尾が動く。

その卵を目掛けて巨大なものの棍棒が振り落とされる。







俺は死んだのか?

エッグカンパニーに卵化されて、サイクロプスに攻撃され・・。

「大丈夫か?」と言われ、そっと目を見開いていくと、しっかりとサイクロプスの攻撃を止めている奴がいた。

ふわりとした黒髪の女性・・カイル。







私は必死に「一つ目の魔物」の攻撃を止める。

ニーナが離れた瞬間に一気に攻撃をなぎ払った。

そしてニーナに対して、力強く叫んだ。

「ニーナ!応急処置を!!」

「ええ・・」

そっとニーナは卵を拾い上げて、草むら付近に隠れる。

そこで、状態異常を直す魔法を唱えてくれた。



ふう と私は魔物たちを見た。

「・・・全部で10匹・・か」

あまり使いたくないのだが・・。

この魔物の数では使うしかないだろう。

それにここは森だ。

「火」の魔法で一瞬に焦がすのも可能だが、それをするとこの森は焼けてしまう。

ならばその反対。氷の魔法を私は静かに唱え始めた。





冷たい冷たい風が吹いてきました。

とても寒いです。

まるで・・・この一帯全てが、元から氷河地帯だったと思えるほどに。

彼女は静かに唱えてます。

何を?

シェザーガでもない。

グレイゴルでもない。

詠唱を聞いている限りでは、私たちが知らない魔法らしいのです。

カイルさんが詠唱を終わらせると、一気に氷の風が敵に押し寄せていきます。

それだけではなく氷の粒も、風と共に押し寄せている為、敵を中心に氷の塊が出来ました。

それを一気に破壊させたのです。

彼女の強さは分かってました。



しかし、それ以上に、にこやかに微笑みかけてくるあどげなさ。

『リュカ』と似ている・・・。

そう感じたのは私だけでしょうか?

しかし、彼女がたっていたのはつかの間でした。

ばたりと、力尽きたように倒れてしまったのです。





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