ここはどこだ?

そう思い、私は右へ左へと視点を動かす。

そこはまさしく黒の世界と言えるべきであろう場所。

全ての視線が黒く塗られている。

ふと耳を澄ましてみる。

誰の・・・何の気配もない。

まるで己が死んでいるかのような静けさだ。



泣き声がする。

それはいつも聞いていた弱々しく幼い少女の・・・ウィジュの声。



* * * * * *



「ウィジュさん!フォウルさん!」

私は「黒い物体」が消えていってしまった場所で叫んでいました。

私には何が起こったのか、それすら分からなかったのです。

「大丈夫か?ニーナ」

そう言ってきたのはシンさんでした。

「ええ・・ですが」

私はまた、二人が消えてしまった場所を見た。

「あれは何だったのでしょうか・・?」

「ウィジュの・・・青の災害が干渉した」

きっぱりと言ったのは、カイルさんでした。

「彼女の称号は「気」。全ての気象を糧にしている」

「・・気象。お天気ですよね。確かに出会った時そういってましたね」

「恐らく私たちが見ていたものは・・・」

はぁ、とシンさんは溜息をつきました。

「影武者のようなもの・・・ということか。それ程、ウィジュというのは弱い存在という訳か」

「ゲイルから聞かないとわからないな」

「ゲイルさん・・・?」

「そうだ。星の民というのはその一世界に一人しか存在しない。この世界はウィジュが肉体としてそれらを貸し与え、代わりにゲイルが神獣としてのチカラをウィジュに貸し与えている・・・媒体と呼ばれる方式だ」

「媒体ですか・・・。ではウィジュさんが影武者なら本物のウィジュさんがいるってことですか?」

「そうだな」

「そういうことになる」

と二人は口をそろえていいます。

「私たちには何かできることはないのですか?」

「ゲイルが干渉してきた以上、これ以上こちらから何かを仕掛けることは出来ないな」

「さらにはウィジュの本体が仮にいても場所が分からないように施してあるらしい」

そうなんですか、と私は俯きました。

「とりあえず待つしかないだろうな」

「ですね」

そう言い、私達は二人が帰ってくるまでそこで待つことにしました。



* * * * * *



ぽたりとしたものが頬に落ちた。

そっと私は目を開いていく。

そこにいたのは幼い少女だった。

しかも私が見たことさえある者。私が守りたい失いたくないと思っていた大切な人。

「ウィジュ・・・なのか?」

こくりと幼い少女・・・ウィジュは頷いた。



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