そこは薄暗い空間でした。

壁に掛けてある灯がゆらゆらと動いています。

そこにはやはり「神」がいました。

まるで私たちを待ち続けていたかのように。

「来たか・・・」

そう言い、私を見ました。

「来なくても良かったものを・・自らの死を遂げにでも来たのか?」

「違います・・私は・・―」

「愛する「リュカ」を助けにでも来たのなら、やめておけ。以前にも言ったとおりもはや「リュカ」はいない」

「・・以前はそう思ってました。でも今は違います。私は・・」

抵抗すら出来ないかもしれない。

それでも、いい。

「神」をにらみつけて私はこう言いました。

「私は貴方を止めにきました」

「神」は冷静に ほぅ と溜息をつきました。

「私を止めに来たのか・・だがどうやって止める?この破壊を、この絶望を、この殺意を。もはやお前が考えている以上に私は欲望に潤っている」

「・・違うと思うわ」

そう答えたのは、ウィジュさんでした。

「違うと思う。貴方はもっと優しい。全てを破壊しようと考えてなかったから、この帝都以外の場所は破壊尽くしてはいない。貴方が殺意も、破壊も考えているのなら・・・この世界は死んでいたでしょうね」

その言葉で、「神」はウィジュさんをにらみつけました。

「・・・貴様に何が分かる」

小さな火が、大きな火に進化するように「神」はウィジュさんに対して怒ります。

「貴様に何が分かる!ここまでこの世界を大きくしたのは私だ!お前は綺麗事ばかり言っているが実際はなにもしてはいない!」

「・・そうよ。私は何もしていなかった」

でも と言葉を少し辛そうにウィジュさんは吐き出します。

「でも、貴方に会いに来たと言うことは・・・分かってるわよね」

「・・・・・・」

「勝負をしましょう。今度こそ、貴方をあっといわせてあげるから」



私の隣で、ふふっと謎の笑みを浮かべているシオン・・否スフィア。

「・・何だか面白くなってきたな」

その言葉には同感する・・が。ちょっと気持ち悪いと思う。

「・・星の民とガーディアンフォースが対決なんぞ、聞いたことないぞ」

「・・しかし。止めなくてもいいのか?」

「まぁ、今は様子を見ていよう」



ぎぃんと金属が交錯しあう音がする。

「何故、守りばかりだ?もっと攻撃して来い」

「分かってるわよ・・・!」

手に持っている銀弓で「神」から来る斬撃を何とか守備してはいるのだが、肝心の攻撃が上手く回らない。

(なんとかしないと・・!)

と、頭の中では分かっていてもいざ行動できるかどうかと言うと。

(うう・・私の体!きっちり動いて!)

もがけばもがくほど、動きがぎくしゃくしていってしまう。

「くぅ・・絶対に・・絶対にぃ!」

「!」

苦しそうでも勢いがある。ただそれだけだが、それが最重要。

その勢いを増す私に驚き、「神」は珍しく防御の姿勢を見せた。

ひゅんと飛んできた弓矢は「神」に当たることもなく地面に落ちた。

「『一発だけでも当てて見せるんだからっ』」

そう言いウィジュが飛ばした弓矢。

それは光線のような輝きをし、動揺された「神」に一直線に飛んでいった。

「『光の矢!』」

どんっという音がし、「神」は倒れたようにおもわれた。

「・・・成長したな、ウィジュ」

「・・!!」

しゅうしゅうという霧のようなものが周りに溢れ出す。

「まさか、あれごときで私が倒れるとは思わなかった。だが、それだけで私を「倒せる」とは思ってはいないだろうな?」

ひゅん という音がした。

「さらばだ、ウィジュ」

ウィジュが青ざめる。

目の前には・・・皇帝の剣。

『あ・・・』

「止めてください!!」

ばっとニーナがウィジュと「神」の間にでた。



皇帝の剣が、ニーナの目の前で止まった。



ニーナが「神」を見つめる。

「神」は無言になりつつも、皇帝の剣を懐にしまった。

刹那。

『私は弱いままなんだ・・・』

ウィジュが呟いた。だがそれはいつものウィジュの声ではない。

幼そうな少女の声だった。



瞬間その場は暗くなりました。

場所が暗くなったのではありません。私たちの目の前に黒い空間が突如出現したのです。

そして、私の目の前に現れた黒い空間は、私たちを吸い込み始めます。

「・・!!」

逃げようとしても「黒い手」が私の腕を引っ張ってきます。

その時でした。

どんっ と私の身体が突き飛ばされました。

「!」

私が見たものはフォウルさんでした。

黒い空間にすぐに吸い込まれていく「神」の姿でした。

「逃げろ・・生き延びろ・・!」

「神」の口から懐かしい音が聞こえてきます。

「ニーナ」

私に微笑んで、彼は黒い空間に吸い込まれていってしまいました。

私には分かる・・。あの微笑は。

「フォウルさん・・!リュカぁ!」

二人の微笑だったということを。





*TOP*       *Next*      *Back*