「船?あそこにあるけど・・・」

リプの町に着いた私は、早速船のことについて尋ねた。

確かに、あった。

これで次の町へといけると思った。

だが。





「ん?船に乗せろ?だめだめ、水神様の許しがないと乗せちゃあいけないという昔っからのしきたりがあるんだ」

「・・しきたり・・?」

「そうだ、それに今じゃあ簡単に船は動かせねぇ。なぜなら、聖なる海にでっけぇ魔物が出るからな」

「・・魔物か・・」

魔物・・それはこの世界の人間に対し、簡単に牙を向ける存在。

それが取り引きならば・・こっちにとっては好都合だ。

「それならばこうしよう。私がその魔物を倒しつつ、船はシュークの町に行く。どうやら、船は魔物のせいでここで滞在しているようだし・・・」

「・・ん〜。お前強いのか? 見た目は普通の女性だし。 あまり居心地は良くないぞ」

半信半疑な目をされたのだが、後ろにいた者たちがこう提案した。

「だったら、船底で一晩過ごさせれば?」





ということで。

私は今、船底にいる。

「汚いな・・」

相当汚いのは分かっていたが、コレほどまでとは。

それでも、私が着ている服は汚くならないので別に良しとした。

「何か出ないかな・・・」

ごろりと寝て、手足を伸ばす。

かなり暇である。

「何か出ないかな・・・」

もう一回 同じ事を言う私。

そして後ろからふと声を掛けられた。

『攻撃と特能、どちらがいい?』

「・・特能・・?」

相手が分からないのに対し、暇だからという口実で勝手に言葉を放つ自分に乾杯した。

だが、あまり興味がないのも事実だが。

『でろでろでーん!』

後ろの方で陽気な声がしたが、「何か・・ないかなぁ」とわざと無視をしかけた。

『って無視するな!そこ!!』

こっちは頑張って変身までしたのにと嘆くが、それでも無視する私に、『しょうがない・・・こうなったらぁ・・・バル!』とそう言って魔力を放ってきた。

だが、そんなのは私には無効だ。

『・・な・・何故に・・―』

にやりと私は微笑んだ。

魔力は私の中へ吸収された。

服にはドレイン(吸収)の効果が施されているのだ。

「もうちょっと可愛がろうと思ったのに・・・」

数秒も経たないうちに、変な魔物は私の人形とされた。





翌日。

「す・・すげーな姉ちゃん」

「最近、変な魔物がうろついてて、俺達でもあまり手を出さなかった船底で・・」

「・・一晩過ごしやがった・・」

こくりと私はうなずいた。

まぁ最近の変な魔物というのは、瞬殺したあのへんな魔物のことだろう。

まぁ 暇が無くなったからよかったものの・・・。

「こりゃあ、本物だな。よし分かった!しきたりも許しも捨てて旅立つぞ!お前ら!」

そして船は出港した。







あのマリーンブルーが思い出す。

まさしく、それは私が1週間過ごしていた無人島の風景。

それとは違い、ここの海はスカイブルー。

ぼーっと海ばかりを見ている私につんつんと背中をつついてきた。

「・・?」

「お前、何処から来なさったんだ?」

「・・南から、かな」

適当な方向を言う私。

「南といやぁ 滅んだ帝都付近か?」

「・・帝都・・?」

帝都も知らんのか と頭(ジグというらしい)は言ってきた。

「帝都というのはな、西側の大陸の下ら辺にある大きな都のことを言うんだが、1年前からそこから逃げてくる輩がいるんだ」

「ほう」

そんな話など聞いたこともない私は興味津々で聞く。

「逃げてくる輩曰く、破壊神だの言っているらしいが今となっちゃあ何がなんだか分かりやしねぇ」

「破壊神・・」

神というキーワードが気になった。

もしかするとあいつは意外にも行動していたりするのだろうか?



と、考え事をしている時だった。

ざぱぁ、となにか巨大なものが海底から飛び出してきた。

「ちっ 現れやがったな!岩野郎!」

大きな大きな岩が目の前に現れたのだ。

ぶくぶくと音がするし、何かが蒸発する音がする。

岩はジグに「岩野郎」といわれた事を根に持っているらしい。

多分本人は、見た目を重視しただけだと思うのだが。

『お前・・馬鹿にした?』

どうやら、この岩は耳が遠く、知的能力が相当悪いようだ。

『オレ 神なのに馬鹿にした!?』

「神・・・?」

「神」という言葉に微笑に反応する私だが、それも馬鹿にする要因らしい。

『馬鹿にしたな!!馬鹿にしたな!!』

何故、この魔物が「神」を名乗るかが分からなかったが、破壊神が原因なのだろう。

とにかくこの魔物をなんとかしなければこのまま船は海の底だ。

愛用の刀を鞘からだし、戦闘の態勢に入った。

『馬鹿に―』

相手がその巨大な岩の手で船を沈める前に、一気にその硬い体を力で叩き込み、海に沈めた。



「すげぇ!すげぇよ!!」

「俺ら、こんな強い人を船に乗せてたんだな!!」

「ありがとうな!お前の名は・・?」

ふわりと風を感じ、私は微笑んだ。

「カイルという」



数日後、船は無事にシュークに着いた。



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