無事に遺跡のワープゲートを抜けたユキ率いる一行。

ワクティ村の方向へ戻ってしまったガナッシュとは別れ、次なる場所へ。

さて、果たして一行が向かう場所にあるものは・・・。





「ラヴ」があるモノ





「オレ達がエニグマの仲間だって!?冗談言っちゃいけねぇぜ!」

・・・何か懐かしい声が草原の草々に響き渡る。

「てめぇ、その変な乗り物から出てきてから話をしやがれ!!」

「たいど悪ィぞ!!」

「いや、態度は確かに良くないが、悪いヤツではなさそうだ。村のものに説明がつけばそれでいい。我々が納得できる答えを聞かせてもらいたい。
オマエ達はどこから来たんだ?」

「何度もバルサミコが言ってるだろうに・・・。何で納得できないんだろうね」

はぁ、と溜息をついた少年。

そんな懐かしい声に引き寄せられるかのように、戦士風の愛の大使の後ろの方に行った。

「今、バルサミコとリクの声が聞こえたような気がする〜」

「ああ、オレも聞こえたよ。ピスタチオ、ユキは?」

「確かにそんな声がしたわね」

「オイラは文鳥の声に、文鳥のニオイがするだけっぴ」

一人ずつその声の主の感想を唱えだした刹那。

「なにものだ!!オマエたち!!」

「キャッ!!いや〜ん びっくり〜」

「オイラたち、ヘンな魔物に追われてるっぴ」

「エニグマってヤツだ。知ってるか?」

「どう見ても立派な愛の大使よ?エニグマって言うのは酷いわね、キルシュ」

しっかりとした種族名で言われほっとしたのか、愛の大使は「エニグマ」という言葉に突っ込みを入れた。

「エニグマ!!それはあっしらにとっても敵!」

「ところで、アンタらこそ何者だっぴ?なんで魔バスを襲ってるっぴ?」

「あっしらは、ワクティ村の村長親衛隊ッ!タルトとタタン!

そして、まん中においでなのが、村長のムスコさんだッ!

ということで、ムスコさんからも一言どうぞ!」

「ムスコさん」と言う言葉に敏感に反応し、タタンに怒る愛の大使。

「ムスコさんではない!! 村長と呼べ! 村長と!」

「いや、しかしですね、本当の村長はあなたのお父上で・・・」

「ワクティ村では、愛のデッパリを持つものが村長と決まっている。愛のデッパリを父上からゆずりうけた以上は、私がワクティの村長だ!」

かつん、と音を立てて叩きつけた棒のようなもの。それが愛のデッパリらしい。

「他所者ども!早々に立ち去るがよい。この周辺は、我ら愛の大使が管理している。近頃では、エニグマも出没すると聞く」

「だけど、ムスコさん。私達は―」

ほぼ禁句とも言える言葉を言ってしまったアランシア。

はっ、と口を閉じるがもはや遅い。

「ムスコさんではない!!私の名前はトルティーヤ、ワクティ村の村長だッ!!」

キレているムスコさん・・・否、トルティーヤを無視し「そんちょーしなさい」とタルトは言った。

「行くぞ!」

もはやこの場には用が無いようで、トルティーヤ達は去っていった。







「いよう! 悪ガキども!生きてやがったな!魔バスの天才ドライバー様もこっちに来てるぜぃ!
いやぁ〜、さっきはエニグマの仲間だと勘違いされて、からまれてたんだ。 全く、オレのどこが悪いヤツに見えるってんだ!?」

「まぁ僕までエニグマ扱いされるなんて思わなかったけどね」

「バルサミコとリクだっぴ〜!」

「おう、リク。大丈夫だったか?」

「うん。魔バスって結構快適なんだ。皆も入りなよ」

リクの言葉に誘われ、ユキ一行は魔バスへと入っていった。





「リク。他の皆は見かけた?」

ユキはリクに率直的に聞いてみた。

「僕は結構気を失ってたみたいだから見かけてはいないけど、バルサミコの情報ではレモン達が帰ってこないみたいなんだ」

「帰ってこない!?どうしてレモン達が!?」

分かりやすくいうとね、と魔バスのふわふわのソファーにもたれかかるリク。

「魔バスが壊れてしまったらしく、カフェオレ達がすぐに来てくれたみたいでね。

バルサミコが魔バスを直す部品を取り出そうと思ってカフェオレの腹開いたら・・・」

ごくり、と皆が皆、唾を飲み込んだ。

恐る恐るアランシアは「開いたら・・・?」と聞いてみた。

「逃げた」

後ろからバルサミコが突発的に声を出した。

「・・・オレも逃げたいよ」

「がーはっはっはっは!! 青いね〜キルシュ青年!! オマエもいずれオレみてぇな汚ェ大人になんだよ〜!!」

はぁ、と溜息をつきつつアランシアは「・・・とりあえず、その4人を探してきます・・・」と呟いた。

「そしたら僕もそろそろ動こうかな」

ぐるり、と腕を回しつつリクは言った。

「でも気を失ってたんでしょ? 大丈夫なの?」

「うん。例えエニグマが出てきても僕の闇魔法があれば大丈夫だよ」

「分かった。行きましょう」







ワクティ村。

愛の大使という「愛」のみで生き続ける種族の村。

掲示板も愛の大使達に話しても「愛」「愛」「愛」・・・。

「本当に暑苦しい人ばかりね」

ラヴラヴな話しかしてくれない愛の大使を少し睨みつつ、キレつつユキは言った。

「はいはい、ユキは短気すぎ。それよりも村長さん宅で宮殿の鍵貸してもらおうね」

そう。すぐさまレモン達を追いかけようとしたが宮殿に入る扉が開かなかったのだ。

バルサミコから「そうそう。言い忘れてたが、宮殿方面に行くには鍵が必要だぞ」と助言をくれたのだが・・・。

「バルサミコの情報って〜、的確だけどちょっと遅いんだよね〜」

「そりゃあ、バルサミコだしな」

うんうん、とバルサミコの愚痴を共通しつつも村長宅へと入っていく一同。

が。

「あれ?」

「何よ、リク。早く開けなさいよ」

「うーん・・・。鍵が掛けてあるみたいだね」

困った顔をするリクに、愛の大使の一人が話しかけてくる。

「村長さんの家に用があるなら上にある入口から入ったほうがいいですよ?」

「そうなんだ。ありがとう」

リクがそう言うと、愛の大使は顔を真っ赤にさせて「いえ・・・」と言った。



言われたとおりに上の入口から入っていくとむっつりとしたムスコさん・・・じゃなく、トルティーヤがいた。

その隣には本物の村長・・・じゃなくて、トルティーヤの父ガトーがいる。

「おお、旅の人か。先程の三人の連れの方ひゃの?」

「先程の三人って・・・レモン達のことだね」

「そうですひゃ。先程の三人様にレーミッツ宮殿へ入るための、宮殿の鍵を渡したのひゃ。

レーミッツ宮殿に用があるなら、ともに行かれるとよいひゃ。 宮殿の鍵も渡しますひゃ」

そっとリクの掌に宮殿の鍵を乗せて、ガトーは微笑んだ。

それとはひきかえに、隣にいたトルティーヤがキレる。

「父上!! なぜ 余所者に宮殿のカギを渡すのですか!」

「トルティーヤ、すまぬひゃ。これも全て「愛」故ひゃ。何が無くとも、思いやり。それが即ち「愛」ひゃ」

「そんなことのどこが「愛」ですか!?もっと真剣に考えてください!あなたはもう、村長のシカクなどない!!」

「そうかも知れん。この村に村長などおらんひゃ。皆自分で考え、自分で自分を正しておるひゃ」

「・・・私を村長とは認めないとおっしゃるのですね。それも良いでしょう。しかし、村のルールと安全は私が守ります!!」

キレ続けるトルティーヤに対し、尚微笑み続けるガトー。

そんなガトーを無視し、リク達に言い放った。

「旅の者よ、宮殿の鍵は自由に使うが良い。しかし、エニグマは私達の敵。私達が倒す!」

「手柄は全部ムスコさんのもの!」

「そうすりゃ村人もムスコさんを村長と認めるってもの!」

トルティーヤの発言を守るかのようにタルトとタタンは言った。

「そのとおり!!行くぞ!親衛隊ッ!!」と勇みつつ、ムスコさん・・・否トルティーヤとタルトとタタンは村長宅から出て行った。

「素直な好青年だっぴ」

「ホント。格好だけは勇ましいわね」

窓から小さく見えるトルティーヤの後ろ姿を見てピスタチオとユキは言った。

寂しげにガトーはリク達に対し、言った。

「すまぬひゃ。見苦しい姿をみせましたひゃ。

ムスコが持ってる愛のデッパリは「村長ワンド」とも呼ばれ、村長の証とされてきた品ですひゃ。

また、ワンドは 闇をはらう力を持っているとも 言い伝わっておりますひゃ。

ワンドを彼に持たせておるのは、村のためでも、彼のためでもありますひゃ。これもまた「愛」ですのひゃ」

「うん。気持ちは少し分かるよ。宮殿の鍵、ありがとう村長さん」

そう言い、リク達一行も村長宅から出て行った。





「にしても、ムスコさん達勇ましく出て行ったのはいいけどちゃんとエニグマ倒せるのかしらね」

「・・・さあ」



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