光のプレーン。
かつて光の民と呼ばれる民族らが生活をしていた場所。
いつまでも光が差し込み、闇を消すプレーンの力は計り知れないとまで言われている。
そして今。
その世界に一人の「天使」が舞い降りた。
・・・否。
それは「天使」という中身まで純粋な光ではなく。
外見とは裏腹に、中身は少々黒々しい闇に包まれているような気がしてならない。
その「天使」と「悪魔」の両方を持つ者の名は・・・、ユキ。
「こんなところに出ちゃったけど・・」
そう言い、一度周囲を見渡してみる。
「一体皆は何処へあのエニグマって奴に飛ばされたのかしら」
はぁ、と一度溜息をついてみる。
溜息をつくのも無理はない。
ユキの周囲に広がるのは、まさしく広大なる自然・・・「森」なのだから。
とりあえず、この森を抜けるために何故か人工的に作られている道に沿って歩いていくことにした。
そして目の前に飛び込んできた光景は・・・。
一匹の犬族が一人きょろりきょろりとしていた所だった。
その犬族はやっとユキがいることに気づいたのか、大声をかけてきた。
「あっ!ユキ!助かったっぴ!!」
殆ど泣きそうな声でユキに飛びついてくる犬族―ヴォークス―のピスタチオ。
「オイラ海岸で突然化け物に追いまわされて・・・。でも、もう大丈夫だっぴ!仲間に会えたっぴ!」
そんな楽しげな時間はとても短かった。
何故なら、ユキの背後で疼く闇がそれを壊そうとしているからだ。
そこから出てきたのは・・・ピスタチオが言っている「化け物」そのもの。
「・・・・!!!!」
ほぼ仰天とした顔つきで猛ダッシュで逃げていくピスタチオ。
「化け物」であるエニグマをさらりと倒し終わったユキは一人溜息をつく。
「まったくもう。恐がりなんだから」
犬族の意思は強く・・弱く・・
川にたどり着いたユキは川に沿って歩いていく。
そこは涼しくて、華やかな花が咲いているから。
「異世界にも、しっかりと草木があるのね」
独り言を言いつつ、ふと丸太橋が架かっている所を見つめてみた。
・・・誰か倒れている・・?
「ほくしゃー!」
(こまったっぴ・・・。死んだフリしてるの見破られたら、オイラの人生もいよいよ終わりだっぴ)
心の中でピスタチオは密やかに人生の終わりを感じていた。
だがふと後ろの存在に気づいた。
「あ・・・ユキ!!」
「・・・何をしているの、ピスタチオ」
ピスタチオの死んだフリしている格好が少々可愛くて、正直いうと男の子としては情けない。
ユキはそう感じてはぁ、と溜息をついた。
そんなユキの心など知ってか知らずか、
「これからこのモンスターと戦うところだっぴ!一緒にユキも戦うっぴ!!」
その態度に「嫌よ」とピスタチオに対してキツイ言葉が飛ぶ。
「意地悪言っちゃ嫌だっぴぃぃ!!」
「大丈夫よ。相手は獣属性。ピスタチオの魔法なら効果抜群よ!」
悲鳴の雄たけびをあげているピスタチオの肩をもち、いつ何時逃げないように支えているユキ。
「オイラの魔法なんて・・・」
「強くなりたいんでしょ!」
「そうだけど・・・」
「ならびしっと魔法使いなさいよ!!」
「ううう、わかったっぴ!!」
泣く泣くピスタチオは魔法を放つ。
『どんぐりんこ!』
モンスターに匹敵するほどの巨大なドングリがモンスターの頭上に出てきた。
そしてそのままドングリは落下した。
「や・・やったっぴ―」
「まだよ、ピスタチオ」
確かに貧相な攻撃だったが結構な効果が発揮した。
だが、このモンスターを倒す所まではいっていない。
しかも、なんとか立ち上がろうとしている。
その様子を悲鳴を上げつつピスタチオは呆然と立ち尽くしていた。
「私が止めを刺すわ。下がっていなさい、ピスタチオ」
そう言い、ユキは立ち上がろうとしているモンスターの前に立ち、魔法を放つ。
『ムーンライト!!』
眩い直線の光が周囲を包み込んでいった。
「ひゃっほ〜!!オイラ 生きてるっぴ!生きてるっぴー!」
「良かったわね。生きていて」
くるくると喜びの舞(?)を踊るピスタチオ少年。
それを呆れつつ、少々可愛いと思いつつ犬族の少年を見つめているユキ。
「ところで、ユキ」
「なに?」
「これからどうするっぴ?西の方からはアランシアの匂いがするんだっぴ!」
「じゃあそっちね」
すっと西のほうへと歩き出したユキ。
「い・・・いくんだっぴか?」
「当然。貴方は付いて来ても来なくてもどちらでもいいのよ?ピスタチオ」
「いくっぴ!絶対皆、アランシアの匂いの方面にいるっぴ!」
魔法の強さはなくても、冒険心に溢れている本当に不思議なピスタチオ。
だから先生は言った。
『君が何処にいても、皆心の中で繋がっているわ。
それに君が気づいたとき、本当の自分自身の力に目覚めることが出来るの。
それが「本当の強さ」。そこからが魔法使いとしての本当の始まり』
「ここを見るっぴ!」
西へ西へといった先にあったのは一つの洞窟だった。
「この先にアランシアがいるっぴ!行くしかないっぴ!」
「当然。行きましょう、ピスタチオ」
「イエ〜ッス!イカスっぴ!シビれるっぴ!」
全く、このピスタチオ少年は何処まで絶好調なのか・・・。
その先は洞窟だった。
暗くジメジメした地面。
まさしく、あの洞窟と同じにおいがそこにはあった。
そして目の前にはアランシアらしき人物。
「アランシア・・・?」
「・・・どうしたんだっぴ?どこか変だっぴ」
「上手いこと、エニグマの手から逃れているようだけど。
わざわざこんな闇の中に友達を追ってくるなんて・・・まさか自惚れているのかな?」
「・・・エニグマ?」
そのアランシアらしき人物は興味深そうに「ふぅん」と闇なる笑みを浮かべる。
「何も知らないんだね。まぁいいだろう。
エニグマは闇なるもの。それ故に凄まじい魔力を身につけている。
敵にまわすと恐ろしい存在だが、いざ味方にすれば無敵の強さを手に入れることが出来る」
きらりと瞳を光らせるアランシアらしき人物。
「・・・!?ピスタチオ、今すぐにそのアランシアから離れなさい」
ようやく分かった。
このアランシアは・・・こいつは・・・。
それでもピスタチオはアランシアらしき人物にせがんだ。
「どうすれば強くなれるっぴ!?」
「簡単な話だ。身体を貸してやるだけ。『融合』するのさ」
「・・・融・・・合・・・?」
途端にピスタチオの瞳が揺らめいた。
「そうだ。もう少し傍に来なよ。教えてあげる」
「ピスタチオ!駄目だ!行くな!!」
「そうだぜ。ピスタチオ!そいつから離れるんだ!!」
いつか聞いた声が洞窟内で響いた。
そしてアランシアらしき人物目掛けて巨大な火の玉が飛んできた。
「!?」
「ふん。邪魔が入ったか・・・」
その「邪魔者」とは・・・。
「キ・・・キルシュ?」
「ピスタチオ。それはアランシアじゃない。りっぱな偽者だ」
「え・・・ええ!?」
「そして・・・本物なら俺の直ぐ傍に・・―」
「いや〜ん。あたしってあんなのなの〜?」
のんびりした口調。音符を象った精霊「ハミング」を連れているのが何よりのアランシアの証拠である。
「あ・・あう?あうあー?」
混乱と情けなさなのか、変な声をピスタチオは出した。
「ふ・・・。そこまで分かっていて、何故私の呪術に掛かったのかな?」
ふいに、アランシアらしき人物は真の姿を現し始めた。
それはユキが見た、赤いエニグマではない。
青いエニグマとは少々似ているが形が全く違っている。
その姿を「ふーん」という殆ど・・・否、全く興味を持たずにユキは見ていた。
そして先ほどのエニグマの問いに対して口を開いた。
「それは、それのほうが面白いと感じたからよ」
「ならば、楽しませてくれるかな?この私を」
「楽しませる途中で、貴方を楽にしてあげるわ」
そう言い、ユキは光の精霊「ルクス」を瞬時に出した。
「・・・光属性か。確かに苦戦しそうだな・・・だが・・・」
ぶあっと出てきたのは、5体の闇属性の魔物。
「洞窟の中はもはや「闇」で溢れている。お前の「光」など怖くはない」
「・・・確かに、私の「光」だけでは貴方を完全に倒すことは出来ないかもしれないわね」
だが、ユキの後ろにはしっかりと仲間の姿がある。
「怖いけどがんばるっぴ!!」
そう言い、ピスタチオは「どんぐり」を召喚したが・・・。
闇属性の小さな魔物「ダミーゴースト」にはあまり効かない。
「な・・・なんでだっぴぃ!」
「離れてな!ピスタチオ!」
そう言い「ヒートフォンデュ」を唱えた。
すると・・・。
「すごい〜。皆逃げてく〜」
「こいつら、結構小心者らしいぜ?脅かすと直ぐ逃げてく。その前に」
「はいはい〜。『魂のレクイエム〜♪』」
ふんわりした音波が驚いて逃げていくダミーゴーストたちを眠らせていく。
「すごいっぴ!」
「ユキ!今のうちに!」
「分かったわ」
そう言うと、ユキは魔法発動の詠唱に入った。
「させん!『ミジョテー』」
黒いガス状のものがエニグマから発され、ユキの周囲に溶け込んだ。
「く・・・魔力が・・・」
闇属性の追加攻撃の「魔力吸収」により魔力の一部を吸い取られたのか、ユキは詠唱を止めてしまった・・・。
「ユキィ!」
「ユキ!コレを食べろ!」
ひゅんと飛ばされてきたのは一匹の「黄色いミミズグミ」。
それを急いで食べ、詠唱を唱えなおす。
「ルクス!行くわよ!」
きぃんという光属性の詠唱ならではの眩い音がした。
『スペース=ライト!』
「ぐおおお・・・おのれ・・・こうなったら・・・!!」
そう言い、最後の力を振り絞りエニグマはキルシュに向かって牙をむいた。
「うお!」
これはかわせない。
そう思った途端。
『ミジョテー!』
エニグマとは違う闇属性攻撃がエニグマを襲った。
「ぎゃああああ・・・」
その場にはエニグマの断末魔だけが残り散った・・・。
「ホント、タイミングだけは一級よね?ガナッシュ」
そう言うと、初級闇属性攻撃を放った人物「ガナッシュ」が現れた。
「全く・・・。光属性の君がいないから苦戦していたんだぞ」
「あら?海岸では誰かさんは「俺一人で十分だ」って超がつくほどカッコイイ事言っていた様な気がするんだけど?」
「・・・・・」
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