二人の冒険者がいた。

その目の前には・・・「穴」があった。

「な、なんだこれ・・・」と、そう言ったのは青年だった。

「深いね・・・これは・・・」と、少女はあっさり目に言う。

何度となく二人は旅をしてきた。ある二人を待ちながらなのだが。

「さあどうする?バルハ」

「・・俺は却下だ クルル」

「いまだに高いところ駄目なんだね」

はぁ、と溜息をつくクルル。

「それにしても、何でこんな所にあるんだろうな」

「さあ。でもあの二人を待ってないとね」

「あいつら・・・特にファルスは何を言い出すか分からんからな」

「まぁね」

そのまま二人は日が暮れてしまったのでその場で夕食をつくる事にした。

「うまいなぁ、クルルが作るものは」

「でしょぉ? 今日は頑張ってみたの」

冒険者二人組は今日はその場で就寝をした。



翌日。

「穴」は不気味な光を発していた。

「なんかまずい気配がするんだが・・」

「そうだね・・離れない?」

「そうだ―」

そうだな という前に後ろから誰かに蹴られる二人。

「はよいかんかい!!!」

「だっ」

誰だという前に 二人は「穴」の中に落ちていった。



「穴」の中に落ちていく二人の旅人を見て してやったりと微笑する少年。

「まったく・・早く入ってよね!!」

そう言うと「穴」は 無かったかのように地面となって消えていった。

「時間がないからとはいえ・・・これはさすがに・・・」

そう言ったのは以前ティナとロックの時にも少年と共にいた女性。

「ごめんなさい・・・つい」

「いや、まぁいいが・・・何度も言うが本当にいいのか?」

「はい、俺だけで十分だと思います」

「本当ならば私があいつの眼を起こさせなければならないのだが」

「そんなことしたら俺が母に怒られちゃいます」

「では時間がないので失礼します」と言い少年は消え去った。



「どちらにせよ、怒られるぞ。あの人はそういったところに敏感なのだからな」



* * * * * *



「うわぁぁぁ」

どすんと尻餅をつく二人。

「いってぇぇぇぇ」

「痛ぁぁぁい。なんなのあれ」

「誰だよ・・て、ここって・・・」

目の前には大きい城があった。

そして二人は同時に「ここは何処?」と言った。

刹那。

ごごご、と地面から音がした。

「な・・なんだ・・?」

バルハは自分がいる地面を見る。

そして今自分たちが目指している城を見た。

黒い黒い歪みが唐突にそこに現れた。

「そ・・・そんなばかな」

自分達が暗黒魔導士を倒したとき消えたはずの。

「な・・んで・・!」

消した筈の「無」がそこにあった。

その「無」から 何かが出てきた。

近くから見たら・・・なにかの結晶体だった。

「クリスタル・・・?」

クリスタル・・それは魔力の源であり、無から生まれたものでもある。

しかし、すべての世界がそんな風に創られてはいない。

違う世界では「想像の物質」とも言われ

また違う世界では「ただの魔力の塊」とも言われ。

そのクリスタルはただ単に黒く光を吸収する。

その周りにあったものを吸い尽くしていく。

そしてクリスタルは旋回をし、北へ北へといってしまった。

それまでそこにあった城はまるで最初からなかったかのようになくなっていた。

「一体・・・ここは・・・」

二人は空を見つめ・・・呆然としていた。



* * * * * *



黒い結晶体は旋回し、そのまま魔王城へと吸い込まれていった。

即ち・・・フォルスの元へ。

そのフォルスは窓を開けてそれを待っていた。

『アルテマ・・・か?』

「久しいな、オズマ。やっと目覚めたか」

『ああ。ということは我らが主の肉体を手に入れたのか?』

「そういうことになるな」

『そうか・・・ついに・・・ついに我らの主が・・・』

「まだ分からない」

そう言い、空を見る。

「もうすぐ、勇者がやってくる」

『勇者? なんだそれは』

素朴な疑問のオズマに対し、不思議な笑みを浮かべるフォルス。



「主を惑わす光の者のことだ」



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