「なんだよ〜!これっぽっちしか報酬は無いのか!」
「しょうがないでしょ〜・・・あそこの宝部屋に入ったらまさか荒れてたなんて誰が予想できるのよ!!」
一つの遺跡からの帰り道。
毎回恒例となった愚痴り合いの中、なんとかフィンドルについた ミントとロック。
勢い良く、二人は宿屋へと駆け抜けていく。
「ただいま〜!!」
「ティナ〜!あまり宝手に・・・あれ?」
きょろりと辺りを見渡すが肝心のティナがいない。
部屋の奥へとはいっていく二人。
「ティナ・・・?」
呆然となった。
ティナも呆然となっているのだが。
身体の異常はなさそうだが、精神的に参っているのか荒れた顔つきになっていた。
全く眠れなかったという感じにも思えたし、何かに疲れ果てていたとも思えた。
そして、もう一つ。
「ねぇ ティナ。ライルは?」
そう言った刹那。
ティナが顔を上げた。
微妙に震えながら声を発するティナ。
「・・・ライル・・・フォルスという人に・・・連れ去られて・・・」
「「えっ!!!」」
驚く二人。
「連れ去られる間際に・・・『ライルを取り戻したければ北にある森々を超えて我が城に来い』って・・・」
「・・・そんな・・・ライル・・・」
守れなかった一人の少女を思い浮かべ、全員その場で俯いた。
* * * * * *
「眠ってしまったか・・・」
フォルスは一人呟く。
ここはフォルスが住む魔王城と呼ばれる領土。
誰でも立ち入る事はできるが、待ちわびているのは魔物のみである。
しかし、そこから見る風景は人間の貴族が住むぐらいの空一色。
魔物の領土なのに、まさに絶景といえるほどの綺麗っぷりである。
眠ってしまったライルに毛布をかぶせてやる。
「あの洗脳もさすがに今晩効き目がなくなるだろう。だが、ここからは逃げ出せない」
そう。誰かがライルを救出に来るまで。
「それまでに、残りの4つの戦獣達を結晶化させておかねばならない」
そう言い、ライルの眠っている部屋から立ち去っていった。
* * * * * *
「魔王・・?」
「フォルスという名前はここいらでは噂になっているみたい。別名魔物の統括者」
「そんな奴が何故ライルを?」
「それがさっぱりなのよねぇ〜。ライルの正体もわからないし・・・ただ」
「「ただ?」」
「ライルには人間では絶対的に無い、角を持っていたの」
「角・・・確かにあったわね」
「何かのハーフとか? 例えば・・・」
「それが分かればいいんだけどね。本人も分からないといっていたわ」
「うーん・・・。ますます分からない」
「でも、角というのは召喚や魔法を使用する際にはとてつもない開放元となる場所ともいえるの。角があるのとないのとでは魔力は桁違いよ」
(さすがは召喚獣のハーフ様・・・)
ロックはそう心の中で呟いた。
「それが悪用されたら・・・」
「可能性はあるわね」
「早速行ってみようぜ、その城とやらにさ」
そうして3人は旅立ちの準備を整い始めた。
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