「ライルって角生えてるんだね」

そう言ったのはミントだった。

ライルの角は溶けない氷のように光に反射しないと分かりずらい程度に見えない。

それぐらいに最初は角の存在を気付かなかったのだ。

「これは・・生まれた時から生えていて。生まれの土地も生まれた月も知りませんが・・・」

へー とミントが言う。

「にしても、これからどこ行くのかとか本当にないの?」

「ないです」

そうライルの目的地は一切無い。

ただひたすらに逃げるのみである。

「なら一緒に世界を歩き回るのもいいわね。それと 私のライバルにも合わせたいしね。でも今一体どこにいるかは私も知らないけど」

「・・・はぁ」

所在が分からなければ意味がないのでは? と呆れてしまうライル。

「まずは ここから近い 砂漠の町「フィンドル」を目指そっか!」

「はい!」

そう言って改めて張り切って2人は歩きだしたのである。







砂漠の町「フィンドル」

そこに降り立った奇妙な二人組み。

一人はバンダナをつけている男。

もう一人は珍しい緑の髪の女。

「こ・・ここは?」

不思議な少年と出会って、そして歪みの中に入れられ。そして?

「ここは・・見たことも無い所だな・・」

ロックも知らない土地。そんな所に飛ばされてしまったのか?

「とりあえず聞いてみるとするか・・」

そう言って見ていた中年の男に聞いてみる。

「ここがどこだか知っているか?」

「東天王国領地の砂漠の町「フィンドル」だよ」

「・・・ありがとう、おっさん」

そう言って目をぱちくりさせた。

「東天・・・王国?????」

ロックにとっては聞きなれない土地名だった。

「どうする?ロック」

ティナの疑問にうーん と悩むロック。

「この土地に慣れている奴がいればなぁ」

そう思い、まだまだ晴れ晴れしている空を見上げた。



「ここがフィンドル?」

そう言った一人の少女にロックの目がいった。

「・・・ふわぁ・・・」

見たことも無い・・そんな町に興味津々な少女。

「ライルにとっては初めての町・・ということだね?」

後ろから来た女がいった。

「はい・・だってずっとあそこにいたから・・」

そう言って空を見上げる。

「空が・・綺麗・・」

透き通る青・・。

その色で何もかも忘れそうになってしまう・・。



「君たち・・この町について知ってる?」

突然現れ、そう言ってきた知らない男。

「知ってるけど・・あんた達何者?」

うーん と悩む男。

「ちょっと・・ロック。こんな所で名乗ってもいいの?ここ異世界でしょ?」

男の後ろから声をかける 不思議な髪の色の女。

「まぁ・・・って 待て!ティナ!! そんな所で異世界だとかいったら−」

「もう聞こえたわよ?」

(てぃ・・ティナの所為でっ)

(・・・しょうがないじゃない!つい口を滑らせちゃったんだから!)

あれやこれやと二人で争い始めてしまった。

さらにその場をもっと呆然とさせたのは、あまり世界の事を知らないライルだった。

つんつんとミントに突っついてくる。

「どうしたの?ライル」

「異世界って何?」





不思議な出会いをした4人は宿屋に入り全てを語ることにした。



「はい、まずは自己紹介から」

「俺はロック!トレージャーハンターだ」

まだトレージャーハンターと名乗っていたのか と少々驚くティナ。

「えっと私はティナ。よろしくね」

「じゃあ 私! ミントというんだけど。私もトレージャーハンターなのよね」

「えっと・・はじめまして・・ライルといいます」

「ロックとティナは・・なんでこの世界に来たの?」

「「分からない」」

流石、何年も共に仲間として旅を続けた二人は綺麗にはもる。

「ただ、不思議な青年にこの世界に吹き飛ばされたというのは言えるんだけど」

「じゃあ、ここに来たのはあんた達の意思じゃない と?」

「そうそう」

その間ライルは黙っていた。それもその筈・・・。

それに気付いたのはミントだった。

「ライル?どうしたの?だんまりして」

「異世界って何?」

まだそれを引きずっていたのかと思い、ミントは溜息をついた。

「異世界と言うのはね、この世界とは違う世界の事」

「へぇ〜、じゃあこことは違うところから来たんだ〜」

お前は一体何を聞いていたんだ、とその場にいたライル以外は心の中で突っ込みを入れた。

「というかあんた、本当に私と同じトレージャーハンター?」

疑い深くミントはロックをじろじろ見る。

それに対して「・・・まぁ そうだよ」とたじたじになるロック。

「じゃあさ、ちょっと行きたいところがあるんだけど」

「ミントさん。あまりその話を持ち出すのは―」

と ティナが制止する前に「ホントかっ!? じゃあいく!!」と、まるで少年のように目を光らせるロック。

そのままトレージャーハンターの二人は盛り上がり、ダンジョンへとひた走っていってしまった。

呆然とするティナの横でねぇねぇ、と言ってくるライル。

「トレージャーハンターって何? 二人とも何処に行っちゃったの?」

「トレージャーハンターって言うのはね・・・ダンジョンが好きな人なの。そのダンジョンに走って行っちゃったの。一種の病気ね」

「病気なの?お腹痛かったり風邪引いたりしちゃうの?」

誤った認識をライルに教えるつもりだったが・・・。

生まれたばかりの子供のように質問してくるライルに対し、知人のいつもの病気らしきものの発動とライルの素朴な質問に呆れてものが言えなくなってくるティナであった。





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