ホルンは空を飛びながら地上を眺め見、溜息をついた。

(これが我が世界か…。 汚い世界だ。 こんな世界など、主の私は望みもしない)

そう思いながらも、神は大地に降り立った。

そして歩いていくとそこには滅者の姿と醜きプロテクターの姿があった。

そこに近づいていくホルン。

滅者はにやりと微笑み「へぇ…まさか本命が来るとはね…」と言った。





ホルンと同じ方向に飛んでいく蛇と1人の女性。

『ホルンはどこまで飛んでいったのかしら…』

『恐らくは、滅者…だと思う。 正直始祖神がやることは俺の考えからしても非常識的なものだからね』

「それというのはつまりは…」

『まぁ何やらかすか分からない、と言えばいいのかな』

同じ神としても、目的や定め等違う点が多い。さらにはチカラさえも歴然と違う始祖神であればこそ、何をやらかすのかは不透明だ。

だからこそ、最悪な場面だけは避けたいのだが…。

そんな考えをしていた刹那。コアの目に映ってきたのはホルンがミントを襲おうとしている画だった。

その横にはホルンを睨みつけながらも倒れているジーク。



ホルンは剣を召喚し、持つ。

そして倒れているプロテクターに対し、冷酷に振り下ろした。

刹那、ぎぃん という金属音がする。

槍を持ったコアの姿がそこにあった。

それを見たホルンはぎり、と歯軋りする。

「何故だ! 何故、私の邪魔をする! それを殺せば―」

「分かってるよ。 でも、今の君にプロテクターを殺させるわけにはいかない」

ホルンはコアを睨みつけ、剣を横に振り上げた。

それをコアはふわりとかわす。

「プロテクターなど要らぬ!! 己の事も知らぬ者など、どれだけ守っても我がチカラにすらならぬ! それにこの世界を守るためなら、プロテクターの犠牲など関係ない!」

「成る程…」

ずるりと立ち上がり、呟いたのはジークだった。

「お前の事は良く分かった」

黒い陣がジークを軸に広がり、ジークはホルンを睨みつける。

「ならば受け止めるが良い!! ミントの苦しさを! 悲しみを!」

ジークから強大な魔力が解き放たれる。

それはホルン目掛けて一気に襲い掛かった。

それを受け止めようとするホルン。

だが、目の前で受け止めたのはコアだった。

否、それは受け止めたのではなく…庇ったのだ。

「コアさん!!」

どさりと倒れるコア。

背中からしゅうしゅうと煙がたちあがっている。

呆然とコアを見るホルン。

はっとした瞬間、ジークとミントがいなくなっているのを気付いた。

ホルンは空を見る。そしてふわりと身体が上がり、何処かへと行こうとする。

それを見たルゥは「何処に行くつもりですか!!?」と切れ目に言った。

「…お前たちには関係ない」

そう言い残して、ホルンは空へと飛んでいってしまった。

それを二人は睨みつけながら見送った。

「…ふぅ…」と、コアは溜息をつき、ずるりと立ち上がろうとする。

『動いちゃ駄目!』と、ティナは言い回復魔法を唱えだした。

ふわりとした暖かみのあるチカラがコアの背中を癒す。

「ああ…効くぅ…。 ありがとね、ティナ」

「でも…これからどうしますか? ホルンも何処かへと行ってしまったし…」

「多分ね…ホルンは…ライルの所…だと思うん…だ…」

眠たそうな声を発するコア。思わず目を擦る。

「ん…ごめん。 さっきの攻撃で…ちょっと眠たいから…寝るよ」

それを言った瞬間、がくりとコアは崩れ落ちた。

恐る恐るティナはコアの肩に触れる。

口からは寝息が聞こえてきた。

『…よかった…。 本当に寝てて…』

ほっとするティナに対し、ルゥは空を見つめる。

(この世界の神は…全てを本当に殺そうとしているのか…?)

どうしてそんなことをするのか。それをしている理由はなんだろうか。

それはルゥには到底分からない領域だった。



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