ライルとホルンを包んでいた光が消えていく。

しかし、そこに立っていたのはホルン一人だった。

そして微笑する。

「くく…はははははは。 ついに、ついに! この肉体を手に入れたぞ!」

先程の冷静冷酷な瞳とは違う。強烈な欲望を手に入れたようにホルンは笑った。

「…ホルン? ライルは…どこにいってしまったんだ」

ロックの声に、はたとするホルンだったが 未だに微笑を繰り返している。

「ライリアか…。 ふふ、ここに」

そう言い、ホルンは一歩下がった。

そこに広がっていたのは巨大な魔法陣。

その中央に鏡のような箱の中にライルがいた。

「ライル!!」

「そんなことしてどうするつもりですか!!」

「どうする? これをして初めて人間共をこの世界から消せるのだよ」

「それは戦獣達が言ってた事…」

「戦獣は我が意思でもある。 何もためらいなどない」

「それで君は世界を救えると言うの?」

真剣な眼差しでコアはホルンを見つめていた。

「何とでも言え、ガーディアンフォース。お前とここにいる者には手は出さない」

「出したら他の始祖神達が怒って君を消すよ」

ホルンは ふん、とつまらなさそうに溜息を飛ばし、外へと飛んでいってしまった。



「行っちゃった…」

ぽつりとリースが言った。

「これから…どうするんだ? コア」

バルハはそう言い、魔法陣を見た。

「バルハ、それは俺でも壊せない。 壊れたとしてもホルンが戻って俺が消されるけど…そうなったら君たちにも命の保証はないね」

「でも…このまま放っては置けないよ…」

例え、他の世界から来たとしても。それは皆同じ考えだった。

「まぁ、ホルンを追いかけるしかないね。でも君達はここで待っててね」

「どうして…?」

「また降りるの、面倒くさいでしょ。 それにこんな大所帯じゃ、俺でも動きづらい。 できるなら俺含めて三人で行きたいな」

「なら、私も行くわ。 空だって飛べるから大丈夫」

そう言いティナは青いオーラに包まれ、そして幻獣の姿になった。

幻獣と言っても、そこまで巨大ではなく、肌が桃色のオーラに包まれているだけ。

「ティナ綺麗…」

「妖精さんみたいです」

『えへへ、ありがとう』

恥ずかしがるティナに呆然とたじたじと見つめている男達。

「ティ…ティナなのか」

こくりと頷くティナ。 その顔には自信が溢れていた。

「じゃあ、僕も行くよ。 一応この世界の人間だし。 放っては置けない」

そう言うルゥとティナをコアは見つめた。

「ティナ、君はガイアのガーディアンフォースなんだね。 そしてルゥはこの世界に間接的に惹かれあっている…」

「分かるのですか!?」『私がガイアの…ガーディアンフォース…』

「そりゃあ俺は世界中の中心核の情報を全部知っているからね。 で、君らと俺の三人なら一緒に行けるね」

そう言い、コアは先程のコウアトルの姿に変化させた。

『じゃあ、行ってくるね。 皆、死にたくなかったらそこから動かないでね』

そう言ってルゥを乗せて空へと飛んでいった。



* * * * * *



その頃。



ミントはがたがたと音を立てて震える窓を不安そうに見つめていた。

「ここ…壊れない? ジール」

「大丈夫。 …だが、来た様だ」

「来た? 誰が?」

窓の外をミントはじっくりと見つめてみた。

「滅者…かつての主…まさかここまで早く見つかるとは…」

ぽつりとジールが言った刹那。

ミントには違う声が聞こえていた。

それは優しく、優しく『おいで』と呼ぶ声…ミントにとっては懐かしい声。

「…ミント?」

ふらりといってしまいそうなミントをジールが抱きしめて止めた。



刹那。



「駄目だよ、ジール。 俺の邪魔をしては」

その声の直ぐ後、ジールの腹から血が出てきた。

「ジーク…何を…この世界を暗黒に変えるつもりか!!」

「まぁ、大体そうだね。 でも君が邪魔をしてはいけなんだ」

「ミントに…何をした! ジーク!!」

ジークと呼ばれた男はくすくすと笑った。

「君は本当に何も変わらない。 ガーディアンフォースになってもまだ変わらないんだね」

そっと、意識を失っているミントの頬を触れるジーク。

「一種の催眠術だよ…。 でもこれほど効力があるとは思わなかった。 まぁプロテクターだから仕方ないんだけどね」

そう言い、ジークはジールを微笑みながら見た。

「ミントは貰っていくよ、ジール」

「ジーク…待―」

待て、と言う前にジールは意識を失った。





*TOP*       *Back*      *Next*