そしてやっと長い長い階段を登り終えたら、そこには巨大な扉があった。

「ぜぇぜぇ・・・やっと、頂上か」

「頂上というよりも何だか大きな広場みたい・・・」

「にしても大きい扉ですね〜」

「ホントね・・・」

「って、お前たちはなんで息が乱れてないんだよ!」

とバルハが言ったが、その場にいた全員が「日頃の行いだ」と一斉に言ってきた。

(・・・じゃあ、俺は? 息が乱れている俺は「日頃の行いが悪い」のか!?)

「バルハさん、どうしたの?」

空を飛び回っていた蛇はいつの間にかヒトの形に戻っていた。

そして、ライルが仲間のところにパタパタと走ってきた。

「いや・・・なんでもないぜ・・・ハハ・・・」

とバルハは誤魔化す。

「で、この扉をどうする気なんだ?」

ロックがコアに問いかけてくる。

「俺が開けれる訳ないよ。開けるのはライルさ」

「なんで、ライルなんだ? お前だって「神」じゃないのか?」

「確かに俺も「神」ではある。 でもそうも容易にこの世界の神のテリトリーには侵入できない。 侵入した途端に殺される」

「殺される・・・って、そこまで怯えることなのか? それならばお前もチカラとやらを使って―」

「それをやれば他の世界も一気に潰れる。 君たちの世界もそうなってしまうけどそれでもいいなら」

「いやいやいや! やっと手に入れた平和なんだ。 そうも早く潰れてしまうと困るぜ」

「しかもロックは愛している妻もいるもんね〜」

「って、ティナ! そ・・・そんな恥ずかしい事は言わないでくれよ・・・」

と顔を真っ赤にさせるロック。

それを静かにアルテマが見つめていた。

「ってことで、ライル。 よろしく〜」

「は・・・はい!」

「だ・か・ら。 緊張しなくてもいいって」

「は・・・はぅい!」

「・・・駄目だこりゃ・・・」

かっちんこちんになっているライルを見て、はぁ・・・と溜息をするコアだった。



ぎぎぎ、とライルが力を振り絞って扉を開けた先にいたのは一人の男だった。

ライルと同じ角をもち、瞳と髪色は金色に輝いている。そして白いローブを着ていた。

「貴方が・・・ホルン?」

「我が肉体よ。やっと此処まで辿り着いたか。それにしても人間まで来るとはな。そして・・・」

ぎろりとコアをその男は睨みつけた。

「始祖の神の一人でもあり太陽都市の守護神、核を司る存在のお前が来るとは」

「俺はここにライルを導かせただけだ。後は君がどうするかだけ」

「ふん・・・」

コアの言葉にとりあえず納得したのか、男はアルテマを見た。

「アルテマよ・・・。我がチカラの為に元の結晶へと戻れ」

「はっ」

「アルテマ・・・!」

ティナが泣きそうな瞳でアルテマを見る。

「やっぱり嫌よ・・・こんなの・・・」

「さらばだ」

さっぱりとした口調でアルテマの姿が霧と化していく。

その霧からは綺麗なクリスタルが出てきた。

「さあ、肉体。 お前の全てを貰い受ける」

「・・・?」

「何も考えなくても良い。 ただ、私の前に来れば良い」

そう言われ、ライルはただこくりと頷き、男の目の前に行く。

「あのね・・・貴方の名前は本当にホルンなの?」

「そうだ」

「私、この世界が大好きだよ」

「知っている」

「でも・・・悲しいの」

「そんな感情など、全て消え去る」

男―ホルンはそう言うと、光が満ち溢れた。



* * * *



「ん…」

何かの気配に気付き、ミントは目を覚ました。

「ここは…?」

周囲を見渡す。

そこはボロボロの一室のようで、冷たい風が隙間から出ている。

寒くはないが、ほんのりと涼しい程度。

「起きたか…」

穏やかな声が後ろから聞こえた。

黒い服で、髪の色は順白、瞳は明るいオレンジの瞳。

「ジー…ル?」

「久しぶりだな。ミント」

「う、うん! ねぇ、私大きくなったでしょ!」

「確かにそうだな」

「でも…この後私はどうなるの?」

「俺が守る」

「じゃあ私もジールを守る」

すっ、とミントは立ち上がった。

「ダメだ…お前では…」

「私だってこのままゆっくりお休みしてたくないわよ。それに私はジールだって守る力を手に入れてるし。寧ろジールが守られちゃったりして」

「だが…」

「それに」と言い、ミントは小さな窓を見つめる。

「嫌な予感がしてならないのよねぇ・・・」



* * * * * *



蠢く暗黒はもうすぐミントとジールが隠れている家に着こうとしていた。

それらは決していいものではない。悪いものとはいえるが中身は一種の決意をしていた。

それらは特に蠢いて、そこから一人の男が出てきた。

その男は笑みを浮かべる。

「もうすぐ…もうすぐミントの苦しみは悲しみは…私の中でチカラとして解放される」

そう言い、小さく遠くに見える隠れ家を見た。

「もうすぐだよ…ミント」

そう言いその男は笑い叫んだ。





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