ふと、ライルは目を覚ました。

「むぅ・・・眩しい」

そう言い、目を擦る。



東天王国で起きた突然の魔物の襲撃はひとまず止んだ。

だが、その大きな爪の後は恐ろしく。

そう。

ロックとルゥを逃がしたエクスデス、そしてバルハとクルルを逃がしたオズマとヴァディスは死体として発見されたのだ・・・。

その身体の傷跡は本当に酷く・・・知ることが無かった3人に対してライル達は泣いた。



「・・・にしても、君は悲しみという感情は無いのかな?」

徹夜してまで書庫で読みふけていたコアが、近くにいたアルテマに言う。

モーグリの姿は一日で治ると言っていたが、意外にもアルテマ自身の耐性があったらしく夜が明けてからもとの姿に戻った。

「そんな感情を汲んでやる場合でもなかろう。あいつらは立派に「使命」を果たした」

「そんなこといってられないくせに」

にやりとコアは微笑み、アルテマを見つめる。

「それよりも・・・。コア、お前があのジールと共にしていたとは・・・」

「まぁそれも含めて本日付で話してから、ある目的地に行かないとね」

そう言い、コアは扉に向かって「入ってきてもいいよ」と言った。

ぞろぞろと入ってきた人間達に対してふぅ、とコアは溜息をつく。

「さて。何処から話すかな」

「聞きたいことがいっぱいある」

唐突にそういったのはロックだった。

コアの冷静なカオに対して、ロックは威嚇するほどの睨みをしている。

そんな彼に、ライルはつんつんと突っついて話しかけてきた。

「あ・・・あの、いいですか?ロックさん」

「ん・・・ああ」

ライルは改めてコアを見つめて口を開く。

「は・・・初めまして。ライリア=フォースと言います。えっと・・・その・・・あの・・・」

「だ、大丈夫?ライル・・・。言葉になってないわよ」

硬直しているライルに、慌ててフォローに入ろうとするティナ。

それでも・・・尚。

「わ・・・私、自分自身のことが分からなくてそれでも此処まで来てしまいました。

でもフォルス・・・じゃなくてアルテマさんは私のことをいつも「神」って言ってました。

でも・・・実感がわかなくて・・・どうすればいいのかも分からなくて」

必死に言葉を探すライルをコアは冷静な瞳で見つめた。

「私は・・・何者なんですか?」

その一言にコアは口を開いた。

「ライル、君は俺と同じ「神」だ」

「!!」

「一言で言えば、ね。でもただの「神」じゃない。始祖神と呼ばれるこの世界を統べ、守る者。さらにいうと星の民の俺と違うのはその強大な力だね」

「私が・・・神さま・・・」

呆然としているライルに、アルテマは「コア、少し説明がアバウトではないか?」とフォローする。

「いや、だってそんなもんだよ俺達。それに、君はクリスタルの心と話せる」

「じゃあ、ライルが神様として。私達はなんで異世界へと?」

以前から湧き上がっていた疑問をリースは声に出した。

「自信が無かった。そうだろ?コア=ラフティ」

冷静に見つめるアルテマ。

そのアルテマにこくりとコアは頷く。

「本当は俺の母さんがやることになっていた事だ。でも、ただ俺みたいな星の民が干渉したらその世界に殺される。だからこそ、能力が高くヒトの能力も強力な始祖神達から選出してもらったんだ」

「他の世界にも始祖神という人が大量にいるのですか!」とシャルロットは驚いていった。

「沢山入るわけではないけど一世界に一人いる」

そう言い、コアはゆっくりそこらにいる人間達を見つめる。

「でも、俺達は何もしていない!」

「いや、君たちはしっかりと事を成し遂げてくれた。それを証拠に・・・ライルに渡す3つのクリスタルもある。俺が一人でやっていたら、恐らく最低でも一つは消されていた」

「ただ逃げてるだけだったですし、ただ人数が多ければ―」

「言っておくが、ただ星の民や始祖神が集結すれば良いという考えは甘いぞ」

最もな事を言おうとしたシャルロットに対し、アルテマは冷静な声でそれを遮断した。

「奴らは決して群れることは無い。単独でその世界を見つめているのだ。だからこそ、強力なチカラを持つ者が複数いる世界はすぐさま潰れる」

「今のところはライルは【覚醒】していないし、俺は自分のチカラを抑えてるけどねぇ。だからこそ動きにくかったのがある」

「・・・ごめんなさい、私」

もっともな事を言おうとしたシャルロットはしょんぼりとした顔つきになった。

「いや、分かってくれるだけで幸いだよ。それにもう一つの壁があったからね・・・」

「その壁ってのがあの黒くて殺気のある影のことか」

「・・・エクスデス・・・オズマ・・・ヴァディスさん・・・」

黒い影に滅された3人の面影をロックは思い出す・・・。

「奴らは滅者と呼ばれるこの世界の破壊者だ。奴らはかつてホルンを封印した角笛を手に全てを飲み込もうとした。だが・・・奴らは我らが封印したはずだが・・・?それをジールが封印を―」

「ジールは違うよ。今回の件で俺の母さんに依頼をしてきたのはジールだから。それにジールはもう・・・」

「そうそう。そのジールって奴は一体何者なんだ?」

「ジールは元滅者で今はガーディアンフォース。ちなみに俺も母の世界を守る守護神」

「ガーディアン・・・フォース・・・」

「なんかカッコイイ・・・」そういったのはまだまだ無知なライルだったりする。

「あいつが・・・ガーディンフォース・・・」

「そうだよ?知らなかったの?」

にこりと微笑むコアに対して、もはや呆れてものが言えないような顔をするアルテマ。

「そういえばジールは何でミントを連れて行ったんだ? そりゃあ、あんな風になってしまったからだとは思うんだけど」

「それもあるけど、本当の理由はミントのその強大なチカラとライルを離れ離れにさせるためだ。さっきアルテマが言ったけど、強大なチカラを持つ者同士を一緒にしてはいけないんだ・・・今は特に」

「なんで・・・―」

理解が出来ないバルハに対して、ティナは自信を持って「あぁ、そういうことね!」と言った。

「例えば強大な氷の魔法と強大な火の魔法を単純にそこでぶつけたら二つとも消滅してしまうけど、その影響は周囲に広がるの。ただの魔法使い同士じゃなくて、もっともっと・・・強大な魔力のぶつかり合いだと影響は大きくなる。だからこそ、今は特に離れ離れになっていないといけなかったのね・・・」

「ってことは私達もあのままだとどうなっていたことか、分からなかったって事ね・・・」

「まぁ、それもあるけど特にミントは滅者に目をつけられてしまったから」

「・・・?どういうことなんですか?」

ミントを一番心配しているルゥは、平然としているコアに問う。

「彼女はこの世界のプロテクターだから」

「!!!」アルテマは驚愕した顔でコアの横顔を見た。

「プロテクターというのは、神の魔力をそのままもつヒトを指す。ライルのような「世界を守る」という使命はない。ただ膨大な魔力を持っている」

「じゃ・・・じゃあ・・・」

「だからこそ、ミントのことはジールに任せたんだ。でも俺達はそれをしている暇はない」

コアはそう言い、座っていた椅子からすっと立ち、また勇者達を見つめる。

「これから行く所は・・・ライルを【覚醒】まで行かせる場所なんだ。それを最低でもしなければこの世界は持たない」

その場所をまるで初めから知っていたかのようにそれを声に出す。

「クリスタルパレスという・・・聖域が今から俺達の目的地だ」



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