がさがさと奏でる草原達と木々の音。

その音がどれほど騒ごうとも3人は戦いをやめようとはしない。

何度もどす黒い腕でエクスデスを切り刻もうとするルゥ。

得意の素早さでエクスデスをナイフで裂けようとするロック。

だが二人とも、もはや戦う力が無くなろうとしていた。

だが、当のエクスデスは後ろを気にしていた。

(・・・背後から冷たい殺気がする・・・)

バルハの仲間であった今は無き「ガラフ」の心とは正反対の・・・。

だからと言って、後ろを振り返ることはない。

刹那。

7人がまっすぐ走っていった道の方面から眩い光があふれ出した。

「な・・・なんだこれ!?」

「眩しい・・・!」

目が眩んだ二人をよそに、エクスデスはその光を見つめた。

(まさか・・・あの人形と主ライリアが対峙しているのか・・・?)

【くくく・・・見つけたぞ・・・】

【「あの時」と同じように全てを破壊するちからダ・・・!!】

さっきからざわざわと騒いでいたのは黒い物体達。

いつの間にかエクスデス、ロック、ルゥを囲んでいた。

「やはり・・・お前達だったか。あの殺気は」

エクスデスはその物体達を睨みつける。

【もうすぐこの世界は我らのものとなる】

【我ラ「滅者」ガ全ての生命体を食し、我らだけの世界にさせるノダ!】

【その為には、お前達も我らの糧となるがいい】

気が付かなかったという事はない。

だが・・・今此処でやられるわけには行かない。

「お前たち逃げるぞ!」

疲れ果てそうになっているロックとルゥにエクスデスは慌てて声をかける。

「え、おい。ちょっと!!」

同じく、慌ててロックとルゥはエクスデスについて行く。

そうして三人は眩い光の方向へと走っていった。





「おい、エクスデスとやら。あれはなんなんだよ!」

後ろから追いかけてくる「滅者」を指差し、ロックは言った。

「遥か昔。ここは「神」が住んでいた。だが、その「神」は奴らに破壊者として利用された。

だが何とか奴らを封印できたが、その存在は消すことは出来なかった。我らの目的は、「神」を復活させ 奴らを全部排除する事だ」

「じゃあ、ライルさんは・・・」

「そう。ライリアは我らの「神」の器だ。その為に封印を解こうとしたが・・・」

「というか、こいつら・・・。なんて殺気なんだ・・!!」

そう。

「滅する者」は標的となる者を見逃すことは無い。

永遠に、標的を追い詰めていくのだ。

エクスデスはふと、ルゥに小さな結晶を渡した。

「これをライリアに渡せ」

それは暗闇でも光る緑色のクリスタル。

「これは我の魂。ライリアにとっては目覚める為の必需品とも言えよう」

そう言うと、エクスデスは立ち止まった。

「このまま行くと、ライリアにも支障をきたしてしまう・・・。お前達にこの世界の運命を渡そう。さあ・・・行け!」

「でも・・・」

ルゥは戸惑う。

では、彼はどうなってしまうのか?

「滅者」に破壊され、殺される運命になってしまうんじゃないのか?

戸惑っているルゥにぽんと肩を叩いたのはロックだった。

「行こうぜ。俺らが敵わなかったエクスデスが言うんだ」

「・・・はい」

ルゥとロックはエクスデスのクリスタルを持ち、走っていく。

「これはしっかりとライルに渡すよ、エクスデス。あんたの無事を祈る」

そう言い残して。



* * * * * *



一方その頃。

化け物と化したミントと「神」として覚醒しようとしているライルのチカラのぶつかり合いは続いていた。

そのチカラと力のぶつかり合いを、ただただティナ達人間は見つめるばかりだ。

「ね・・・ねぇ。これ、どうすればいいの?」

「・・・分からないわ」

「でも、止めないとやばいんじゃ・・・」

だが、勝負は決まっている。

「神」である者にミントのような人間が勝てるはずは無い。

ライルは隙を見てミントに向かって額の角を振り上げる。

「!??」

意外な行動をとったライルに対しての対処は出来ずに、ミントは目を瞑った。



きぃん、と心地よい音がした。

ミントは瞑った瞳を少しずつ開かせる。

身体は何とも無いようだ・・・。

目の前には、男が立っていた。

そう。幼いミントを助けてくれた男。

男は黒いマントを着ており、黒い服を着こなしていた。

髪は珍しいほどの白で長く、瞳はオレンジのような明るい眼。

「また・・・泣いていたようだな。ミント」

ミントはその男の顔を見るや否や、男の大きな身体に抱きついた。

泣きながらも震えているミントの頭を、男はそっと撫でてやる。

「あ・・・貴方、お姉さまを・・・」

その人物を見たことがあるマヤは震えた声で男に言った。

たったった、と誰かが慌てて地下へと降りてくる音がした。

それはティナとロックをこの世界へ誘った少年。

「・・・やっぱり。慌てて来てみれば、君が先に来てたのか・・・。ジール」

男は振り返り、その少年を見た。

ティナも、その少年を見て・・・。

「あー!!貴方は、私達をこの世界に無理やり、吹き飛ばした・・―」

その少年が抱いていたモーグリがティナが叫んでいる間に言う。

「ジール!!貴様が・・・」

何故此処にいるんだ、という前に少年がモーグリの口を塞ぐ。

「コア=ラフティ・・・。やはり無理だった様だ。奴らにミントのチカラがばれた」

ばれた、という言葉に少年コア=ラフティはこくりと頷く。

「だから君がここにいたんだね」

「これからミントを連れていくが・・・」

そう言いつつ、ジールはライルを見つめる。

「大丈夫、まだ間に合う」

「分かった。さあ、ミント・・・―」

ふぁさ、と未だに泣いているミントにジールは黒いマントをかぶせる。

「駄目!!ミントお姉ちゃんを連れて行かないで!!」

ライルが、ぐい とマントを引っ張りながら、ジールにせがんできた。

「お姉ちゃん、苦しがってるの!悲しんでいるの!だから・・・」

「そうよ。貴方が何で彼女を連れて行くの?」

「あなたは何の説明もなしに彼女を連れて行こうとしている。でも、私たちは彼女と一緒に旅をしてきたの」

「お願いです!!」

彼女達の言い分も理解できる。

だが・・・。

ジールは彼女達に冷たく言い放った。

「ならば、お前達は奴らの餌になりたいのか?」

その冷たい声に、シャルロットとティナとリースは困惑し、黙り込む。

「奴らは滅者。かつてこの世界で「神」を操り、世界を破滅寸前まで追い詰めた者達だ。お前達では敵う相手ではない」

「それに、君達は僕の所でやることがあるからね」

「そんな・・・」

がくり、とティナは崩れ落ちる。

「本当は、もう少し早ければよかったけど・・・」

ティナ達の顔色を見て、コアはぽつりと呟いた。

その呟きを聞き、ジールは顔を振る。

「いや。こうなるのは必然だった。ミントが強力なチカラを持った時点から・・・」

すっ と、ライルはマントを引っ張るのをやめた。

「・・・」

「分かるのだな・・・。否、恐らく彼女が・・・陽炎のクリスタルが教えてくれたのだな・・・」

こくり、と頷くライル。

「じゃあ、頼むよ。ジール」

「コア=ラフティも・・・。全ては貴方に掛かっている」

そう言うと、ジールはミントを抱えつつテレポートの魔法を唱え、消え去った。



全てを見送った陽炎のクリスタルは・・・ただ、その場で光り輝いていた。



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