「にしても・・・何処まで行くつもりなんだ、お前は」ふとオズマはヴァディスに言った。

「さあ。でも、ここら辺から恐ろしいほどのチカラを感じる」

貴方にも感じるでしょうに とヴァディスはいい、溜息をついた。

そういい、道を歩いていくと、

「「「「あ」」」」

珍しいカップルに出会った。



「貴方、まさか・・・ヴァディスさん・・・?」

青く長い髪。そして水色の瞳。間違いなくロックが言っていた特徴とぴったりはまる。

「そしてあんたが・・・」

黒い髪と黒い服、そして赤の瞳。間違いなくロックが言っていたヴァディスを殺した存在。

だが、その目の前にはのほほんとしたヴァディスの姿。

「コレは一体どうなってるんだよ・・・!!」

「それは俺が言いたいぐらいだ。ヴァディス、これがお前が気配を感じていたものか?」

「いいえ。彼らにしては強力すぎるわ」

「だろうな。こいつらは恐らくコア=ラフティが召喚した存在だろう」

「・・・コア=ラフティ。って誰だよ?」

少し切れ気味なバルハの服をくいくいと引っ張るクルル。

「・・・バルハ。多分それ・・・私を落とし穴みたいなところに落とした奴よ!」

「ってことは、ティナとロックが出会った人物ってことか。にしてもなんで敵な関係なのにそこまで教えてくれるんだ?」

ぎくり、という音がオズマからしたのは気のせいだろうか。

確かに、敵という関係だというのに、こうも珍しくぺらぺらと喋っているオズマがいることは確かだ。

「ヴァ・・・ヴァディス」

ちらりと縋る思いで「とりあえずの相棒」であるヴァディスを見る。

「あら。別に私は貴方とは違って好戦的じゃないわよ?」

「・・・わ、分かってるっ」

さわ、と風が吹く。

「にしてもどうするつもり?私たちはあれらを消滅までさせないといけないのに」

「・・・だが、例え 我らについて来たとしても・・・」

「その時はその時だし、彼らが自分達から離れていくとでも?」

ヴァディスはそう言いつつバルハとクルルを見つめた。

「俺達にでも出来ることがあれば何でもやるぞ?クルル」

「私はバルハについていくって決めてるから、どちらでもいいけどね」

「ということらしいわ」

実に厄介な味方が増えたものだ、とオズマは心の中で呟いた。







「で。大体コアって奴は何者なんだ」

道なき道を歩む4人。その中のバルハが言った。

「コア=ラフティ。星の民の「核」の称号を持つ 貴方達にとっては神みたいな存在ね」

それを聞いて、クルルは自分らを穴の中へと蹴り落としたことを思い出しつつ。

「あれが神サマ?なんか違うような気がするけど・・・」

「簡単にいえば神のチカラを持つ者、か。世界が創造されるときに生まれ、その世界の主として。またその世界を滅者から守るための使命を持っている」

「・・・そんなに凄いのか?」

「本気になれば、この世界すら壊してしまう存在だ。我らの主ライリアもそうだ。だが・・・」

ふとオズマは歩みを止めた。

他の3人も歩みを止めて、オズマを見つめる。

「我らの主はその滅者に利用された。それが、我らの創造の始まりでもある」

「どういうことだよ・・・」

オズマはふと暗闇で星空も見えない空を見上げた。

「二千年前か、あるいは五千年前か・・・。誰も知らないその時代に我らの主「ホルン」は生まれた。「ホルン」は全ての大地を彷徨い、闇から世界を守っていた。

だが、ある日。「エイオン」という絶大な魔力を誇る者達が、「ホルン」を利用して一つの笛を造りあげた。

そしてその笛はある一人の滅者により手にされ、世界は一気に破滅の道へと歩み始めた。

それを止めたのがガーディアンフォースだった。だが、それだけでは世界中に放たれてしまった膨大な魔力は抑えきれない。そうして生まれたのは我ら「戦獣」だ」

「・・・戦獣?」

そうだ、と言いオズマは懐からきらりと光る結晶を出した。

光っていることは光っている。だがそれは黒き光だ。

「オズマ・・・。それを彼らに渡すの?」

不安ながらもヴァディスは言う。

「ああ。もうすぐ我らの魂は消え行く。その前にでも渡しておきたいと思った」

「私も同感ね。彼らに渡しておけばほぼ自動的にライリアに渡せるし」

そう言うと、ヴァディスも懐から結晶を出してバルハとクルルに渡す。

水面のような綺麗な輝きをそれはしていた。

「・・・これは・・・?」

「我らの魂の一部。そしてライリアが「戦獣」を呼び出すための大切な道具でもある」

「それを大切にライリアに渡してね。そして・・・しっかりと逃げてね」

「逃げる?」

ふと後ろから黒い存在の気配が現れる。

暗くて何も見えないが、それはそこにいるのは分かる。

ネオエクスデスのような気配・・・?

いや、それとは全く違う。

それからみれば自分達は美味しそうな獲物。しっかりと殺気がある。

【ククク・・・逃げられるものか・・・】

【ワレらからブジに逃げられた存在はいない・・・】

【美味しそうな獲物・・・ボクにもちょうだい・・・】

ざわざわとした音がする。

【恐怖しろ・・・そうすれば優しく包んでやる・・・】

「さっそくきたか・・・」

剣の鞘を持ち、剣を出す機会を狙うオズマが言った。

「二人とも逃げて。貴方達も狙われたら、この世界は二度滅ぶことになるわ」

「で・・・でも・・・」

「・・・ライリア様とコア=ラフティによろしくね」

「だめだ!そんなこと・・・」

いつの間に出来上がっていたのか、地面に浮かんだのは魔法陣。

悲しそうにヴァディスは二人の顔を見つめる。



「大丈夫よ。私たちは・・・いつか消え去る「戦獣」だから。それじゃあ・・・また会う日まで・・」

いつの間に発動したのか、魔法陣が光りだした。

そして二人の姿はその場から完全に消え去ったのである。



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