「ここにいたのですか ライル様。あのお方がお待ちです。早く行きましょう」と、そう言ったのは魔物だった。
ちらりと女性は少女―ライルを見た。
「・・・知り合い・・・・ではなさそうね」
ライルは怖い顔でその魔物を睨みつけていた。
「あのお方・・フォルス?」
「あのお方の名も知っていたとは・・さすがライル様。なら話は早い。一緒に行きましょう」
ずいっとライルに近づく魔物。
「嫌っ!」
「何故ですか?貴方にはあのお方しかいないのに」
「この人がいるもん!!絶対フォルスのところには行かない!」
そう言って女性の手を握った。そんな女性は困り果てた顔をしているのだが。
「仕方がない・・・だが、我らは化け物・・そしてお前も−」
「消えてっ!!!」
そう言ってライルの手のひらから現れた一筋の光。
それが魔物に当たる。
「ぐっ・・・」
ぐいっとライルは女性の腕を掴む。
「逃げよう!お姉ちゃん!!」
そう言って逃げ去っていった。
* * * * * * *
何処まで逃げたかはライルも女性も分からない。
ただ必死に腕を握るライルから伝わってくる魔力は微妙ながらも質が高いのを密やかに女性は感じていた。
「はぁはぁ・・ここまでくれば・・」
「ライルっていうの?あんた」
「はい」
「フォルスって誰?なんであんたを狙ってるの?」
「それは・・・分かりません」
「分からない?」
「ただ・・・私は・・・怖くて」
「怖いって?」
「私・・・二人の代理の両親と住んでいたんです。でも・・・良く分からなくて二人とも動かなくなってしまって・・・」
「ということはそのフォルスって奴にその両親を殺されたということ?」
「・・・良く分かりません。でも・・・怖くて逃げてるんです」
逃げているにしてもよく分からない状況。
ただ女性は放っておけない性格の持ち主でもあるために、ぽん とライルの肩を叩き、にこりと微笑んだ。
「じゃあ私と一緒に来ない? 私も旅している途中だし」
「でも・・・」
「私も寂しかったんだ。丁度良く女二人旅したくて仕方なかったし」
「でも・・・ご迷惑を」
「別にそんなことはないわよ。ささ、行きましょ!」
「うん・・ありがとうございます・・」
「私の名前はミント。よろしくねっ」
「私の名前はライルです」
そう言って二人は握手した。
† † † † † †
苦しがる魔物はそこにいた。
流石に光の魔法のダメージは大きかったらしい。
「ぐ・・さすがライル・・侮った・・・。だが私はあいつを無理やりでも・・」
闇に潜む男―フォルスは無言でその魔物を見ていた。
その気配を感じて魔物はフォルスに頭を下げる。
「・・・フォルス様・・・申し訳ございません。しくじりましたが、私がもう一回−」
ぽたりと一滴、青い血が魔物の体内から落ちる。
その魔物も先程の人間と同じように人形のように遺体と化したそれがぼたりと地に落ちた。
そしてフォルスは魔物の遺体にこう言う。
「お前たちも醜き人間と同じ存在だ。いなくなったとて我ら主が困ることはない」
くつりと明け空の月を見て笑うフォルス。その月は紅く・・・不気味で。
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