階段を私は下りていく。

マヤと途中で会ったけど、私は無視して階段を下っていった。

マヤが後ろで「どうしたんですかっ!お姉さま」と叫んでいる。

それの所為でイライラと不安感が体の中で暴れまわり、非常に気持ち悪い。

どうすればいいのか分からないけど。何をすればいいのか分からないけど。

ただ・・・あのクリスタルをハカイしたい。

そうすればこのイライラも不安も全部ぶっ飛ばせる。

今はチカラが欲しいんだ。全部をハカイできるチカラが。



* * * * * *



「あれ?」

裏門入口に着いた一行だったが、3人いなくなっているのに今気づいた。

「何でこんなに少なく・・・」

「いや、ロックは分かるけど・・・バルハとクルルは?」

「知らないです〜。でも、どうするです?このまま行きます?」

リースとシャルロットに促されたティナ。

そんなティナの服をくいくいと引っ張るライル。

「行こう」

「でも・・・ライル・・・」

「何か・・・不思議な気持ちになってるの・・・。何か、下から呼んでいる。叫んでる。でもそんな怖いものじゃないから大丈夫だよ」

「・・・分かった。ライルがそういうのなら。行きましょう」





中に入っても特に自分達が怪しまれるということはなかった。

寧ろ、中では兵士達が倒れており、治療を受けている為 まだバタバタしている状況だ。

魔物は大量に城内に入ったらしく、そこで戦ったらしい。そんな跡が場内のあちこちにあったからだ。

現在は、魔物はとりあえず全部退治されたらしいが、結構な爪あとが残った。

「酷い・・・」

「でもラッキーかもしれないわね。こうやって入れたのだから」

「・・・犯罪ですけど」

「・・・仕方ないわよ。それよりもミントは何処かしら・・・」

きょろきょろとしていると、地下らしき入口を発見した。

「地下に、ライルは何かいるって言ってたわよね?」

「・・・うん」

こくりとライルは頷く。

「もしかすると、ミントもそこだったら一石二鳥ね?」

「・・・いくですか?」

「行くわよ、当然」

にこりと微笑み、ティナは地下らしき入口へと入っていった。





地下に行くと、本みたいなものを持って一人の少女が倒れていた。

慌てて、少女の元へとティナは行って応急処置をする。

「あ・・・ありがとうございます・・・」

「どうしたの?一体・・・」

「それは・・・―」

少女が理由を言う前に、奥の部屋から女の笑い声が聞こえた。

「・・・この声は・・・まさか・・・」

そう言い、ティナとライルとリース、そしてシャルロットはその奥の部屋へと入っていった。

「いけません・・・!そこに入っては・・!!」

少女の・・・マヤの警告を聞くことなく。



奥の空間に入ると、そこにはやはりミントがいた。

あは・・・あっはっは・・・

だが、もはやそれはミントではない。

服を切り裂いて出ている黒い翼。

いつも綺麗なツインテールなのだが、ばさばさに落ちてまさに獣という状態。

そして、笑い声もそれは女特有の高い声ではなくなってきた。

絵に描いた・・・化け物。

あ・・・皆来てたんだ。じゃあ皆も全部ハカイしてあげる。私の妹のように!

「どうしたの、ミント!!なんでこんなことを・・・―」

そう言っている間に放たれたのは魔力の風。

その風からジリジリという静電気らしき音がした。

その直後、無数の雷が降ってきたのだ。

「・・・くぅっ・・・!!」

しかし、庇ったのは 妹であるマヤだった。

「大丈夫!?今、癒すわ」

ケアルガの癒しの風がマヤの身体を直していく。

「なんで・・・お姉様・・・」

なんで?あんたが弱いからよ

見下した姉の瞳はもはやマヤを邪魔者としか映しているのみ。

このチカラは素晴らしいわ。今なら何でもハカイ出来そう

うっとりとミントが見た先には・・・。

「クリスタル!!」

「赤いクリスタルですっ!!」

「もしかして、ミントが狂ったのは・・・クリスタルの所為?」

煩い。もうこれはワタシのもの・・・。誰も触れることは許されないっ!

そう言い、魔法を唱えた。

黒いブレスがティナ達を覆う。

「きゃあ!!」

不意にそれを受けてしまった為、身体がいうことをきかない状態になってしまった。

ふふふ・・・。もっと・・・もっと頂戴・・・

狂っている。でも、狂わせているのは・・・。

「違う」

ライルが呟いた。

「違う。あれはミントお姉ちゃんを救って欲しいって言ってる」

「・・・? ライル?」

すっとライルが立った。

「ホルン・・・」

ライルがその名を告げると、ビキビキ とライルの透明な角がどんどんと長くなっていく。

すっと、ミントに手を伸ばした。直後、眩い光の魔力の風が吹き荒れる。

「ライルっ!!!」

ミントもライルの行動に驚きつつも、どす黒い魔力を手のひらに集めだした。

ライルとミントのチカラがぶつかり合う。



* * * * * *



『・・・!?』

アルテマとコアは対峙を続けていたが、眩い光が城に溢れているのを見て、手を止めた。

「・・・まずいね・・・」

そういうと、アルテマに対して何やら魔法を唱え始めた・・・。

『・・・それは・・・上古代魔法。・・・させぬっ!』

上古代魔法の完成には時間が掛かる。それまでに・・・。

そう思い、アルテマは猛攻撃を繰り出す。

それをひらりとコアはかわし、いつの間にか魔法は完成していた。

『ボディ=チェンジ!』

「・・・!?」

怪しげで巨大な煙が、アルテマを覆っていく。

そしてひゅーん、と落ちてきたのは一匹の「モーグリ」だった。

それをなんとかしてキャッチする。

「く・・・クポォォォォォ!!」

悲鳴を上げたのはモーグリ化をしたアルテマ。

「すげぇ可愛くなったな、アルテマ。ぽんぽんも綺麗なピンク色だ」

にっこりとコアは微笑んだ。だが、アルテマはそれどころではない。

「そんなこといっている場合かクポ!!早く元に戻せクポォ!」

涙ながらに訴えるが、それはすぐさま無効にされる。

「あ、これ24時間ずっとこのままだからさ、暴れず大人しく。ね?」

「・・・」

もはや不幸としか言いようがない可愛らしいアルテマを腕に抱いて、コアは城内へと入っていく。

「・・・もうクポクポしか言えないクポ・・・」



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