「で。あんたたちもまた飛ばされた、と」
呆れた声が、ジャングル内に響き渡った。
林ばかりが散らばっているジャングル。
そこで目を覚ましたロックは、背に落ちてきた女の二人組みを見つける。
そこで証言されたものは自分たちと同じものだった。
「でも〜!私たちが来た時は〜〜!!」
「そんな少年じゃなくフェアリーという妖精だったわ」
必死に言うちびっ子。そして大人の感じの背が高い女。
ちびっ子の方はシャルロット。そして背が高い女の方はリースと名乗った。
「・・・妖精ねぇ・・・」
興味がなさそうに「妖精」という単語を言ってみる。
そしてロックは考える。
何故、少年ではない者がこの世界にこの二人を落としたのか。
そして、少年と妖精は何の関係があるのか。
「まぁ、考えていてもしょうがないか」
「しょうがない・・って。これから私たちいったいどうすればいいの?」
「そんなこといわれてもなぁ〜」
左右上下みても「屋敷」以外は全部森林と暗闇に包まれている。
そう。「屋敷」以外は。
「ん・・?屋敷?」
歩いてそれほど遠くない場所に一つの「屋敷」があった。
ぼろぼろとなり、一体いつ崩壊してしまうのかが分からないほど。
・・それでも入っていってしまうのは「旅人」の性なのだろうか?
「一体これ、いつ作られたのですかねぇ・・」
「それよりも、これ大丈夫なのか?」
不安な言葉がいくつも漏れる。それでも入口にいる。
「大丈夫です」
さらりとした水のように、「屋敷」の中から声がした。
「ここは私の「結界」で守られているので」
そこには少女が立っていた。
水色の髪に水色の瞳。白の上着を着ているので周囲の暗闇でも目立っている。
「君は・・?」
「ここの森林を抜けるのに苦労していると見て思うのですが・・。どうでしょう。一晩だけ、ここに止まっていっては・・?」
そう言われ、ロック シャルロット そしてリースは顔を見合わせた。
* * * * * *
「ん・・・」
朝日が見えないが、何かの気配を感じて ライルは起き上がった。
数日前にライルは本格的に目を覚ましたばかり。
それまで何をされていたのか、何をしていたのかは一切記憶になかった。
ただ、いえることは丁度その数日前に大好きなティナがいたことであった。
そうしてただただ一緒に過ごす日々が増えていった。
フォルスはライルからしてみたら全く見ていない。
しかし、ライルがフォルスに連れ去られたこと、さらにはティナがフォルスについて行き、ここに来たことをティナは話してくれた。
しかし今日はいつもとは何かが違う気配がするらしく、ライルは部屋で右往左往していた。
刹那、目の前にある扉が開かれた。
「ライルっ!!」
ティナは慌てふためいている声を発した。
「ティナお姉ちゃん!?」
「良かった・・・ライル無事で・・・」
ぎゅっとライルを抱くティナ。
「ティナお姉ちゃん。一体どうしたの?」
「魔物の反乱だ」
ティナの後ろからきりっとした口調で言うのはフォルス。
「フォルス・・・?」
しかし、その姿はティナにしてみればいつもとは違う姿だった。
いつもは白の服装を好むのだが、今は・・正装の「黒」。
「お前たちは逃げろ。それを言いに来た。外には馬がいる。それで逃げれるだろう」
「・・貴方は・・・どうするつもりなの?」
「・・・ライルを逃がす為に、ここで囮になる」
「私の・・・?」と、ライルが呟く。
「ダメだよ・・・フォルス死んじゃうよ・・・」
「ライルをよろしく頼む。ティナ」
そうティナに告げ、フォルスは消えていった。
「フォルス・・・!」
フォルスの名前を言いながら、泣きじゃくる少女を抱きながらティナはこう言った。
「ライル・・・。フォルスの言うとおり行こう・・?貴方もここで死んでしまったら、彼だって悲しくなっちゃうよ?」
「・・・でも・・・」
「それに、彼が生きていればどこか出会うはずよ」
「・・・・・・・・」
俯き、フォルスが消えた扉を見て、ライルは寂しく頷いた。
* * * * * *
「始まったね・・・」
ぽつりと呟いた少年がいた。
「これでさらに話がめんどくさくなるけど・・・もうちょっと観察してみてみるか」
くつりと笑みを浮かべ魔族の反乱の現場である魔王城を見つめていた。
「まぁ、あれだけは何とかして破壊行為を止めないといけないけど」
「やっと追い詰めたぞ、魔王フォルス」
そう言ったのは竜人と呼ばれる魔の種族。
その中でも偉人である長がフォルスの目の前にいた。
「何故だ。何故、俺たちの仲間を次々と殺す必要があった?それほど、俺たちはお前のことを信頼していたと言うのに・・」
「・・・・・・・」
フォルスは見下ろすかのようにその竜人の長を見つめ、苦笑している。
「笑い事ではないぞ!!よくも・・・よくも、俺たちの種族を・・・」
「時は来たのだ」
その言葉は一気に周囲の空気を緊迫化させた。
「・・・お前たちは、私の糧にならなければならない」
「お前・・一体何者なのだ・・?お前からは、全くもって「魔」の気配を感じない。寧ろ・・―」
まるで「神」のような威圧感を感じる。そう言う前にフォルスによってふさがれた。
そう。いつの間にか完成された沈黙の魔法を唱えられたからだ。
「何者か・・・。そうだな。簡単にいえば、「人ならざる者」といえば分かるか・・?」
くつりと微笑みを浮かべ、その姿は美しい「白」へと変わっていく。
「そろそろ、我慢の限界のようだ。思う存分破壊させてもらうとするか」
「逃げろ!お前たち!!」
そして・・・・。竜人もその他の襲撃を仕掛けてきた魔の存在も、夕焼けに輝いていたあの魔の城も そこにいた全て。
「白」に破壊された。
「白」によって破壊された、城の残骸を踏みながら、少年は歩いていた。
目的は「白」という名の破壊者となったフォルス。
その姿はもうフォルスではない。白き竜・・・神竜の姿と重なる。
その姿とは裏腹に、少年は慣れ親しんだ友のように声をかけた。
「結構破壊尽くしたねぇ〜。君が築きあげたもの全てを恨んでいたのかい?」
「・・・何者だ」
そうフォルスに言われたので やれやれ、と呟いた。
「星の民一族にして太陽都市ノクトの守護神、核の源 コア=ラフティ。まぁ、知らないと思うけどとりあえずは挨拶は必要だろ?」
「・・・星の民一族だと?」
ずん という音が夕闇に響く。
「何者かは分からぬが、破壊してやる」
「ふーん、問答無用って訳か」
コアは すっ と、手を広げてチカラを解放させた。
それだけで、
「何故だ・・!!身体が・・・」
「まぁ、おとなしく俺の言うことを聞いてくれるだけでいいんだけどさ。別に君を殺す! な〜んてこともしないし」
「・・・何が目的だ」
「うん、まぁその姿だと話しにくいじゃないかな?一旦元に戻って、ゆっくりティーでもしながら話さないか?」
「・・・」
確かに、コアの言うとおりである。
たとえ、己が「人ならざる存在」だとしても、この少年の小さなチカラだけで止められては元も子もない。
それに、この場で無理やり暴れたとしても不利になるのはフォルスである。
「いいだろう・・・話を聞こう」
その言葉を聞いて少年―コアはにっこりと微笑んだ。
* * * * * *
「お城、あんなにも遠くなっちゃった・・・」
呟いたのはティナの前にいるライル。
「ライル・・・」
「・・・でも、ティナお姉ちゃんがいるもん。それにフォルスの気配消えないもん」
「・・・そうだね」
まだ、あの人が生きているのは救いである。
それのお陰でライルも生き延びれるのだから。
そう思いながら、馬は丘という丘を駆け巡っていった。
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