唯一、この世界で四季折々を見れる場所。
そよ風が流れるその平原に操られた死兵を見つめる二人のアンデットの姿があった。
それは先日、エルーカを恨み妬み、それでも不思議な光によって阻まれたディアス。
そしてそのディアスの唯一の友人といえる存在のセルバン。
そんなセルバンは姿勢正しく一方に進む死兵を見て、溜息をついた。
「…哀れだな。 まぁ我らも同じものだが」
「ああ」
「奴に操られるとは…。 あの時…ハイスに図られたときは考えもしなかったことだ」
「今は何故か自由になっているがな…」
そう。何故か分からないが、奴は一時的にしか二人を操ることをしない。
セルバンはまた溜息をつく。
そして頭の中にかつて将軍と伯爵の名の下にいた平和でもなかったが平和ともいえるグランオルグを思い出す。
「…あの時が懐かしいな…」
「あの時…か」
「…ディアナの事を愛してた時も…」
「私の妹、ディアナのことか…」
ディアスはそう言い、溜息をつく。
ディアナはかつての先王である奴の食事係として王宮に仕えていた。
だが、ある日のこと。誤って食事を先王の膝元に溢してしまい…王の反逆として公開処刑された。
あの時の事は…何があっても忘れてはいない。
「あんなことをされてもディアナはあの世で眠っているようで何よりだ」
「ならばいいがな」
そう信じるしかない。
あの世で…心配そうに私達を待っていることを。奴に全て利用されていないことを。
セルバンは振り返り、ディアスに「エルーカに会ったらどうする? 殺したとて、我らには何も生み出すことも出来ないこの状況で」と問いかける。
それに対して、ディアスは手を握り締め「それでも…私は許せないんだ」と返答をする。
「そうか。 お前の気持ちは分かった。 手伝おう」
「ありがとう、助かる」
唯一、四季折々の世界を見れるその場所で、二人の死人は固く絆をつなぎ合わせた。

12.共闘

断崖絶壁が多い、裁きの断崖。
そこから落ちてくる大岩を必死に避けながら走る3人の姿。
その1人…ゼーブル・ファーはぜぇぜぇと喘ぎながら「もう…何だよぅ! こんなに大量に岩が転がってきて…」と文句を言う。
それにクローディアはこくりを頷く。額にはかなり汗を掻いている。
対し、いつもそこを修行場としているガフカはそれに反論する事も出来ないで冷静に2人を見つめながらも走っていた。
刹那、前を行くクローディアが誰かとぶつかる。
それはクローディアが見たことがある姿だった。
「お前は…」
それは「あら」と驚愕もせず、きょとんとした顔でクローディアを見つめている。
「…知り合いか?」
後ろからガフカがそう言い、クローディアは苦笑しながら「…ああ。 レイトネリアという」と紹介する。
「…お前の後ろにいるのは?」
「エルーカさんとオットーさんとウィルさんです。 エルーカさん、こちらはクローディアです」
ガフカは懐かしい姿を見て、エルーカに歩み寄る。
「ガフカさん、お久しぶりですね」
「ああ」
刹那、エルーカはさっとクローディアの後ろに隠れている者を見つける。
「…あの…クローディアさん」
「何だ?」
「後ろにいるお方は…?」
「ああ、ゼーブルのことか」と、クローディアは後ろを振り返るが当の本人はずっとふてくされている顔をしている。
こんな時は大体はクローディアが他者に対し、浮気しないかと不安視したりしている時だ。
そう思い、溜息をつきながら「人見知りが激しい奴だからな…仕方がない」と言った。
「…そう、なのですか」
「クローディアがここにいるということは、二つの種子の設置は終わったのですね」
「ああ」とレイトネリアの言葉にクローディアは返答し、ふと友人の事を思い出す。
「セキュイアは?」
「あの子のなら大丈夫です。 無事に成功させました」
「…そうか。 ならばいいが―」と、クローディアが言った刹那。
北から どぉん、という大きな音がした。
エルーカはその方向を見て、驚愕している。
「あの方向は…砂の砦だな」
ガフカの言葉にクローディアは「…砂の砦?」と問いかける。
「ああ。 アリステルとグランオルグの国境を結ぶ、重要拠点だ!」
ガフカの代わりにオットーが答える。
「って言ってる場合ではないでござる!」
「行きましょう。 嫌な予感がします」


砂の砦。オットーが言うとおり、そこはかつての戦争では重要な拠点になっている国境を結ぶ砂の施設。
まるで崖の上に主導で行くエレベータのように階段が多く、そこを登るだけですぐさまグランオルグ国のグラン平原へと入ることが出来る。
そこで女性が必死に兵士を指揮している光景が目に留まった。
その女性はエルーカを見るや否や、「お久しぶりです。 エルーカ様」と言いながら近づき、深く会釈する。
アリステル准将、ビオラ。その姿はまるで戦女神。戦に立つ花のような存在。
オットーは本を見た通りの人物を見て、心の中で興奮する。
(変な目で見るなでござるよ!)と、ウィルが小声で突っ込む。
そんな7人を見つめ、女性―ビオラは「この人たちは…?」とエルーカに問いかける。
「私のお供のオットーとウィル、仲間のガフカさんにレイトネリアさん。そしてクローディアさんとゼーブルさんです」
「そうでしたか。 私はアリステル准将ビオラと申します」
「よろしくお願いしますね、ビオラ」とレイトネリアは素直に微笑みながら言う、が。
クローディアは興味がないのか、そっぽを向いたまま。
そして、そのまま上の階へと上がっていってしまった。
「全く、あの人は素直じゃないですねぇ」
「何なんだよ、あいつは…!」と、地団駄踏みながら文句を言うオットー。
「仕方がないですよ。 私に対しては、あの人はいつもあんな感じですから」
溜息をつきながらレイトネリアは言う。
それに対し、エルーカは「…過去に何かあったのですか?」と問いかけてみる。
「ありましたけど、まだそれは現在進行形なのです」と、レイトネリアが返答した刹那。
どたどたと兵士の足音が騒ぎ始める。
「どうした?!」
「ビオラ隊長! グランオルグ側の入口が敵によって占領されました! 敵の数は把握できないものの…かなりの大軍です!」
「そうか…。 困ったものだ」
溜息をつく、ビオラ。
それもその筈。
奴らに対し、剣や槍、弓…ありとあらゆる攻撃がまるで聞かないのだ。
ここで進軍を止めているのは奇跡に近い。
だが、このまま進軍されたら…。
そんな悩める准将にレイトネリアは微笑んで「相手は死人です。 私とクローディアがそれを退治する専門なので、私達の力で道を切り開きますね」と言う。
「そんなこと…出来るのか?」
「はい、私とクローディアでしたら」
「でも、クローディアって奴、もう上にあがっていったぜ?」
「恐らくこうなることを予想して、自分だけで行ったんでしょうね」
私達も行きましょう と言い、レイトネリアは愛用のルイアードの剣を鞘から出した。


前を行くクローディア。対し、付いて行くゼーブル。
「ねぇ、いいの? 先に行って」
ゼーブルの発言に対し、クローディアは無言。
それでも話し続けるゼーブル。
「確かにさ、クローディアとレイトネリアは何かと退治したこともある仲だけどさ…。 こういう時だからこそ力を合わせないと…」
その言葉に対してなのか、ぴたりとクローディアは足を止めて、口を開く。
「分かっている。 だが、私はあいつもヒトも好きになれない。 相反している、していないは無しでな」
「…そうなの?」
「それに…」と、クローディアは前方を見た。
そこには大量の死兵たちが入口目掛けて走りこんでくる最中。
その光景を見つめながら、クローディアは愛用のデスブリンガーを鞘から出す。
「これぐらいは私でも十分だ」

レイトネリア達もグランオルグ側の出入り口へと辿り着く。
そこではクローディアとゼーブル、二人だけで大量の死兵と戦っていた。
刹那、がくりとクローディアが膝を地につく。そこに敵の攻撃が容赦なく襲い掛かった。
が、レイトネリアがそれを剣で受け止めて、カウンターを繰り出す。
そしてクローディアを見つめ、レイトネリアは溜息をついた。
「全く、私が嫌いなのは分かりますが…一人で背負おうとしないで下さいね」
その言葉に対しても無言のクローディア。
それでもレイトネリアは話し続ける。
「それに、絆の意思を持つ貴方には分かるでしょう? 皆がいることを」
クローディアは無言で振り返る。
そこには必死に死兵たちと戦うエルーカ、オットー、ウィル、ガフカ、ビオラ…それだけではない。
この砂の砦を守る兵士達全員がその場で戦っていたのである。
「分かったのなら、ここからアンデットを消滅させる陣の構成を手伝ってくださいね」
ここまでされて、無言でいることは出来ないと感じたクローディアは「…仕方がない」と溜息をつきながら剣を地面に突き刺す。
レイトネリアも同じく剣を地面に突き刺した。
刹那、そこから白と黒で出来た陣が出来上がり、重なり合い、そこにいた死兵たち全部を包み込み、消滅させたのだ。
全員呆然とした顔で金色の女神と紫の女神を見つめる。
「…すげぇ…」
「これが…神のチカラ…」
オットーとエルーカはその言葉を出すのが精一杯だった。
対し、クローディアはそれらを無視して出口へと歩いていく。が、そこをゼーブルがジャンプして圧し掛かってきた。
どさりと地面に倒れるクローディア。
「何だ! こんな時に!」
「どうして一人で行こうとしているの? クローディアの悪い所だよ」
その言葉にびくりとクローディアの身体が震える。
「私もレイトネリアの事は知らないし、相反してるから嫌い。 でも、それでも今は1人はダメ。 クローディアはセキュイアに言った筈だ。 「無理するな」って」
「ゼーブルの言う通りです。 私だって…正直貴方の事なんて大の嫌いです。 ですが、今セキュイアがいない中、争ったり一人で突っ込んでいくのはセキュイアに対して失礼ですよ」
まぁ、私が行ったってうるさいとしか感じないのでしょうけど、とレイトネリアは珍しく冷たい言葉を吐き捨てる。
「…。 …そんなことはない」
ゼーブルを払い除け、立ち上がり、そして歩き出す。
「時間はそれ程ない。 行くぞ、レイトネリア」
その言葉にレイトネリアは苦笑して「ええ」と返答し、ビオラに振り向く。
「それでは…ここは大丈夫ですが、念の為お願いしますね、ビオラさん」
ビオラはそれに対し、「はい。 こちらこそ、救ってくれてありがとう…」と感謝の言葉を言う。
いえいえ、とレイトネリアはにこりと微笑み歩き出した。


その頃、死兵たちは急ぎ足で砂の砦へと向かっていくようになった。
その異変にディアスとセルバンはすぐさま察知する。
「奴らの足が速くなった…」
「何かあったのか? 何か急いでいる―」
理由が出来たのか、とセルバンが言おうとした刹那。
ディアスとセルバンの身体が突然硬直する。
呻きをあげながら、それに抵抗するがそれから身体を奪い取ることができない。
そしてその身体は勝手に南へと動き出す。
「どこかに行かせようとしている…?」
「奴の考えに動くのは癪に障るが…仕方ない」
まるで手を離した風船のように、よろりよろりと二人の身体は南へと進む。



グラン平原。
唯一、四季折々の植物達を見れる花溢れるその場所は歴史の中で何度も何度も戦争により失いかけてきた。
それでも尚、咲き続ける花々は可憐で愛しく、そして…―。
ざん、と切り倒される死兵達の手向けとなる。
そんな光景を見ながら、オットーは溜息をつく。
「にしても、どんだけこいつ等いるんだよ…」
「それに…先程からまるで何かに誘導されているような…」
周囲を見渡すエルーカ。その真似をしているのか、ゼーブルも周囲を見渡す。
「その考えは少し当たっているかもしれない」
「ああ…。 あちらから殺意を感じる」
クローディアはそう言い、南を指差した。
「罠かもしれませんが、行ってみましょうか?」とレイトネリアが行こうとした刹那、前方から衝撃波が来る。
それに対し、咄嗟にゼーブルが魔法で黒い壁を張る。
衝撃波を受け止めた黒い壁はその部分だけ白く透明になる。
そこから顔を覗かせたのは…。
「ディアス! セルバン!」
「先日振りですね、エルーカ様」
にこりと微笑みディアスが1歩前へと進む。
エルーカは警戒しながら後ずさりした。
「そう警戒しないで下さい。 私達はただ待っていただけなのですから」
「エルーカ…お前をな」
セルバンの言葉に対し、エルーカは二人を睨みつける。
「…私を殺すつもりですか」
「そういうことだ。 だが、大人しくもしてくれないだろう?」
「ええ。 私は私のやるべきことがある。 貴方達に邪魔はさせません!」
すっと、2丁の魔銃を手にするエルーカ。
「死人は死人で引っ込んでいて下さいね」と言い、レイトネリアも愛用の剣を手にする。
同じく、無言でクローディアも愛剣を握り締める。
「お前の気持ちは分かった。 私も私のやるべきことを達成する」
ディアスもセルバンも剣を手にし、エルーカに一斉に切りかかってきた。
それをクローディアとレイトネリアが受け止める。

そんな一部始終を見ている後ろにいるオットー達。
だが、その後ろからはまたもや大量の死兵が生まれ出てきた。
「こっちはこっちでやるぜ!」
「おう!」
オットーとウィルはお互い声を掛け合い、ガフカは「…頼むぞ、レイトネリア、クローディア」と呟いて自らの氣を高めて戦闘体制をつくる。
ちらりとゼーブルはクローディアを見る。
先程の迷いと焦りと責任感がないことを確認して、にこりと微笑んだ。
そして、ガフカ達を助けに歩いていく。

エルーカの射撃をかわしたディアスとセルバン。
その隙を突いてレイトネリアとクローディアは攻撃する。が、それを簡単に剣で受け止められ、強くなる馬鹿力に対し、誤ってディアスとセルバンを後ろへと吹き飛ばした。
そこにはエルーカが援護射撃をしてくれてるというのに、だ。
「!!」
「しまった!!」
長い詠唱に入ったエルーカに対し、ディアスはにやりと黒い笑みをして剣を突きつけて切り裂いた。が、そこにはエルーカの姿がない。
「!! どこへ―」
行った と言おうとする刹那、上からエルーカの声が響き渡る。
どぉん、という音と共にディアスとセルバンは衝撃で横に散り散りに吹き飛ばされる。
その衝撃はなんともなかったが、立ち上がろうとすると、そこにはレイトネリアとクローディアが立っている。
そして二人同時にディアスとセルバンの腹部を剣で突き刺した。
「!!!」
「が…!!」
呻き声と共に、その場に倒れるディアスとセルバン。
だが…まだ生きているようで、起き上がる。
そして、その腹部を触るが…そこにはある筈の傷がなかった。
「どういう…ことだ?」
「今のは急所だった筈…」
「ええ、急所でしたね。 直ぐには死にませんよ。 まぁ時間の問題なだけです」
「何…?」
セルバンからぼろりと何かが零れ落ちる。
それは腐れ落ちていく己の身体…。
その光景にぞくりと鳥肌が出そうになった。
それを見て、ディアスは「そういうことか…」と言い、クローディアとレイトネリアを見つめる。
反して、「貴方達の体を一時的に支配した主人は、もう駒を手放したようですね」と言い、後ろで死兵と戦っていた4人を見て言う。
「なぜ…そこまで…」
「しかも、その主人はこの世界をかつて支配していた帝国とやらの子孫で、さらにはグランオルグの先王…ですね?」
エルーカはレイトネリアの「先王」と言う言葉を聞き、びくりと身体を振るいあがらせる。
まさか、まさかあの先王ヴィクトールが生きているとは…!
「まさか…そこまで知っているとは…貴様、何者だ?」
セルバンの問いに、レイトネリアはこくりと頷き「私とこの人は他世界から来た者。 まぁ守護神という肩書きを持っている者です。 ね、クローディア」と微笑んで言った。
振られたので、クローディアは「ああ…」と素直に返答をした。
「神…」
確かにあの強さといい、アンデットを無効にしたり逆に特効性のある攻撃をしたりといい。嘘をついているには真実味がある、とセルバンは感じた。
「何故、お父様のいうことを聞いていたのですか?」
エルーカの言葉に対し、ディアスとセルバンは溜息をつく。
「聞いていたわけではない。 だが、私達は奴の手によって復活した。 そしてこう言われた。 「お前たちのやりたいようにやれ。 王族を恨み、憎み、我が駒として」、と」
「確かに我らは奴をも倒そうと何度もしたが、倒すどころか身体を動かなくさせられた…。 何か術のようなものでな」
「しかし、それは一時的なものだ。 それでも奴を倒せず、エルーカ お前を先に殺そうとしたんだ」
「…そう…あの時の為に、な」
セルバンの意味深な言葉に対し、エルーカは「…あの時? それは…―」と問いただそうとした。
が、話している間にもぼろりと崩れ落ちていくディアスとセルバンの身体。
それを見て、エルーカは問いただすのをやめた。
そんなエルーカを見つめながら、ディアスとセルバンは話し続ける。
「奴はこの世界を支配し、殺すつもりだ。 つまりは…この世界を砂漠に変えるということになる。 奴の持っている憎しみや恨みは私達よりも遥かに強い」
「心してかかれ…エルーカ女帝。 そして…それが終わったら…」
「私達が望んだグランオルグ…。 誰も「偽りの罪」もない…国を…」
そう二人は言い残し、ぼろりと解け落ちて二人とも砂となった。
それを見ながらエルーカは「…誰も「偽りの罪」もない国…」とディアスが最後に残した言葉を呟く。
「恐らく、それを自分たちで作りたくて、この世を彷徨っていたのだろう」
「そしてそれが利用された…。 この人たちも被害者だったということですね」
「私は…私は何も知らなかった…」
このまま崩れ落ちそうなエルーカに対し、ぽんぽんとレイトネリアは肩を叩く。
「誰だって知らないことは一つか二つあります。 それを今から知ること、それが大切なのです」
剣を鞘に戻してレイトネリアはにこりと微笑む。
「少々時間が掛かりました。 行きましょう」
そう言い、レイトネリアとエルーカは歩き出すが、クローディアはそれを見つめている。
「先に行け、私はやることがある」
ぶっきらぼうなその言葉にレイトネリアは苦笑して「分かりました」と返答する。
「それでは、また後ほど。 あ、後…」
珍しく恥ずかしそうなレイトネリアに対し、クローディアはまたもやぶっきら棒に「何だ?」と言う。
「あの時、ありがとうございました。 命拾いしましたからね。 本当に感謝しています」
そう言い、ぺこりと頭を下げた。



歩き始めたエルーカ一行。
オットーは後ろを振り向き、遠くに見えるクローディアを見て溜息をつく。
「あいつ物静かなのか、冷静なのか。 強いのは良く分かったけど…良く分かんねぇ奴だったな」
それに対し、レイトネリアはこくりと頷く。
「私もあの人は良く分かりません。 でも…」
先程己がした礼の言葉を思い出し、くすり と微笑む。
「悪い人ではないですから」



その頃、当の本人はと言うと。
レイトネリアに初めてあんなことを言われたし、いつものふわふわした態度ではなく、毅然とした態度だったので、驚愕し呆然と立ち尽くしていた。
そんな硬直状態のクローディアに対し、慌てふためくゼーブル。
「ねぇ…どうしたの!? クローディア。 …も…もしかして…。 ダメ! ダメだぞ、クローディア! セキュイアは分かるけど、レイトネリアを愛すなんて! ホントに嫉妬しちゃうぞ!!!」
「…違うと思うが」
四季折々の花弁が咲く平原で、ガフカの突っ込みは響き渡ることもなく。
ガフカは、二人を見つめながら深い深い溜息をついた。



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